【ドゥカティ モンスター1200S 試乗】モード切替で豹変する“怪物”…和歌山利宏

モーターサイクル 新型車
ドゥカティ モンスター1200S (和歌山利宏氏)
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ドゥカティのネイキッドモデルである『モンスター』が、市場投入されたのは1992年。それは、『900SS』の空冷2バルブユニットを『851』ベースのフレームに搭載した『モンスター900』であった。

その後、フレンドリーな空冷2バルブから、エキサイティングな水冷DOHC4バルブバージョンへと、バリエーションを拡大し、フレームも高剛性な『ST』ベースへと発展。そして現行のモンスターファミリーは、専用設計されたフレームに空冷2バルブユニットを搭載する『696』『796』『1100Evo』の3モデルで構成されている。

この新しい『1200S』は、1100Evoに代わるモンスター系の旗艦モデルだ。となると、1100Evoの発展形ということになるが、単純にそうとは言い切れない。これまでのモンスターは、大きさは中庸で、どちらかと言うと「山椒は小粒でもピリリと辛い」とのイメージもあったが、1200Sはビッグバイクの仲間入りをしたかのような変わりようなのだ。

というのもエンジンは1100Evoの空冷2バルブのDS(デュアルスパーク)エンジンに代わり、1200S水冷4バルブのテスタストレッタ11°を搭載するからだ。

スーパーバイク用ユニットである1198テスタストレッタの、吸気と排気のバルブが両方開いているオーバーラップを、41度から11度に小さくしたものが、テスタストレッタ11°だ。このエンジンは、すでに『ムルティストラーダ』『ディアベル』に搭載されており、排ガス対策上も有利な上、旗艦モデルに相応しい高出力化も可能で、モンスターの進化としては当然の流れでもある。

ところが、テスタストレッタ搭載となると、車体が重く大きくなり、ストリートバイクとしての扱いやすさに難が出てくる。そこで、車体も全面的に新設計。トラスフレームを、クランクケースではなく、前後気筒のシリンダヘッドで支持することで、トラス部を小さくし、エンジンをより有効に剛性部材として利用したことで、ねじり剛性はほぼ2倍に高められる。フレーム単体重量も1.23kg軽減するなど、軽量コンパクト化にも留意された。

それでも、モンスター1200Sは大柄だ。容量が4リットル増量された燃料タンクが眼下にそびえ、実際、徹底した軽量小型化設計を受けても、ホイールベースは61mm大きく、乾燥重量で13kgも重い。

ところが、最初こそ大きさにたじろいでも、すぐに慣れ、扱いやすいことに気付く。足着き性は悪くなく、シート高調整機構を使うと、シート高は25mm低い785mmだ。ハンドルグリップが40mm高く、40mm手前に移動し、モンスターらしさを適度に残しながら、はるかに自然で扱いやすくなっている。低重心感による安心感があるし、あえて前輪分布荷重を大きくせず、ハンドリングは軽快でナチュラルに保たれている。

その上、テスタストレッタ11°は、インジェクション位置の変更やデュアルスパーク化を施した第二世代に進化。一層スムーズになっている。神経質なゴツゴツ感がなく、極低回転になってもギクシャクしにくい。粘りが増していて、低速での取り回しもやりやすいのである。

でも、ただ扱いやすいだけでない。ドゥカらしいエキサイトメントも高まっている。4500rpm辺りで、1速ならスロットルを中程まで開ければ、簡単にフロントが持ち上がるし、そこから中高回転域に渡り、最大トルク域に覆われるのは迫力モノだ。コーナリング性能も高く、常にマシンの状態や接地感の変化が如実に伝わってきて、操っている実感も豊かだ。

幅広いキャラクターは、パワーモード切り換えによっても、さらに磨かれる。最もソフトな“アーバン”では、ホッとした気分で、クルーザーよろしく鼓動感を味わいながら移動。そして、“ツーリング”は、スポーツネイキッドらしい爽快なスポーティさだ。さらに、最も先鋭的な“スポーツ”では、アグレッシブモードで熱く楽しめる。エンジン制御だけでなく、ABSやトラコンなどの制御レベルまでが連動しているので、車両性格までが大きく変わってくるのだ。

大きさから来る快適性と、高性能から来るスポーツ性。その両方を堪能できるのである。

《和歌山 利宏》

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