新型 アクセラ と アテンザ は似て非なるデザイン…マツダ 田畑孝司チーフデザイナー

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マツダ アクセラ 新型
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  • デザイン本部デザイン戦略スタジオ チーフデザイナー 田畑孝司氏
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  • マツダ・Mazda6(日本名:アテンザ セダン)
  • 新型マツダ6(アテンザ)ワゴンとセダン

同じアプローチでのデザインは失敗に終わった

2013年9月に開催されたフランクフルトモーターショーにて、新型となった『MAZDA3(アクセラ)』のセダンと5ドアハッチバック版がお披露目された。そこでデザインを取りまとめた、デザイン戦略スタジオのチーフデザイナーである田畑孝司氏に話を聞くことができた。

「新しい『MAZDA3(アクセラ)』は、よく“ミニアテンザ”って呼ばれます。その場合、ネガティブな意味とポジティブな意味がありますけれど、基本的にポジティブな人が多いようです。それは、彼らの期待を超えた形で提供されているからなんでしょうね。“よくも、魂動デザインをこのサイズで実現してくれた!”と」と田畑氏は、新型の手応えを述べる。

しかし、この反響は「狙ったもの」であり、本当のところ、新型『MAZDA3(アクセラ)』と『アテンザ』のデザインはまったく違っているという。

たとえば、ヘッドライトを見ると、『アテンザ』と新型『MAZDA3(アクセラ)』のデザインは完全に別物だ。ターンシグナルをヘッドライト内に納める『アテンザ』に対して、『MAZDA3(アクセラ)』はヘッドライトの外となるフォグランプの上にある。これは「目が大きいと、ボーッとした印象になる。薄く、スニークにしたい」という狙いからだという。そのように『MAZDA3(アクセラ)』と『アテンザ』はディティールが大きく異なっているのだ。

「最初は、『MAZDA3(アクセラ)』のデザインも『アテンザ』と同じように進めました。『シナリ』と同じく、スリークでダイナミックで、エレガントな形に。でも、それだと全高が低くなって人が乗れなくなってしまいました。スリークでエレガントな形は、Cセグメント以下では無理だったんですね。そのため、ピュアに造形の美しさを出すために『凝縮』という考え方に変更しました。伸びやかではなく、起伏のあるように。腕の筋肉も、まっすぐにしたら伸びるけれど、グッと曲げると力こぶができてたくましく見えるじゃないですか。フェンダーの形も、遠くから見てもスポーティな足回りと見える形にして。キャビンも軽そうだ! という形にすれば、空気抵抗が少なくて速そうだと。そういう記号的に分かりやすくデザインしました」と田畑氏。

まったく異なるデザイン・アプローチでありながらも、印象に残るように記号性を大切にデザインしたというの。そのため「似ているねと言われるのは、本当は我々としては成功なんですよ」と言う。

ちなみに、試行錯誤の結果、デザインをやりなおしたエクステリア・デザインと同様に、インテリアのデザインも白紙撤回、二度目のチャレンジで完成を迎えたという。エクステリアはデザインの失敗であったが、インテリアは「マツダ・コネクト」という新しいITコンセプトを導入するためというのが、その白紙撤回の理由であったとか。

◆走りを感じさせるデザインを目指した結果、セダンとハッチのドアが共通になった

また、新型『MAZDA3(アクセラ)』では、フロントとリアのドアが5ドアハッチバックとセダンで共通になっている。これはかなり珍しいケースだ。

「デザインで、最初から“フロントドアはセダンとハッチバックで一緒にしよう”とやっていましたが、“リアは絶対にできません”と言っていました。でも、スタンスの良いクルマで『魂動デザイン』を表現しよう。キャビンの重心がしっかりとタイヤに乗っていて、遠くから見ても走りを感じるようなデザインをしていくうちにバケてきました。これならセダンとハッチバックのドアを一緒にできるなと確信が持てたんですよ」と田畑氏。

リヤタイヤにキャビンの重心を乗せるため、『MAZDA3(アクセラ)』のキャビンは小さくデザインされ、サイドウインドウが描く上弦のラインは早々とタイヤに向かって下がってゆく。これは、リアドアの後ろにあるべきリアクオーターウインドウを廃止したことも、大きく効いている。

「デザイン的にリアクオーターウインドウを取り払いたかったんです。でも、後方視界の確保で大変でした。これまでは競合との勝ち負けみたいな話でいっていましたけれど、考え方を変えようと。どんなシチュエーションでもきちんと見えて安全性を確保すればいいんだと。それで新しく定義を決めて死角をなくしていけば、何の問題もないと。ベンチマークや他社との比較ではなく、自分たちの考えるこれがベストだ! という考えです」

そうしてデザインしていくうちに、別々にデザインを進めていたセダンとハッチバックのリアドアの誤差は3mmほどしかなかったのだ。いつのまにか同じデザインに収束したというのだ。

「それでもセダンはトランク部分がありますので、伸びやかに見えます。ハッチバックはキャビンを小さくした分、アジリティが高そうに見えますでしょ」と田畑氏は説明した。

《鈴木ケンイチ》

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