【フィット プロトタイプ 試乗】スーパーカブとの共通点は“クロスオーバー”であること…家村浩明

試乗記 国産車
ホンダ フィット(プロトタイプ)
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  • 家村 浩明
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『フィット』の開発陣は、このクルマのめざすところは「四輪のスーパーカブ」なのだと語った。なるほど!ホンダ・マンというのは、こういう“夢の見方”をするのか。

そのことに感じ入るとともに、作り手側のこういう気合いの入り方にちょっと感動した。そういえば、この“夢”(ドリーム)というのもホンダ&ホンダ・マンの非常に好む言葉で、この最新フィットでも、そのメインのコンセプトは「アース・ドリーム」であるという主張がなされている。

ちなみに『スーパーカブ』とは、今日ではあまりにも見慣れた(見慣れすぎた!)二輪車かもしれないが、しかし、これが1958年に登場するまでは、このような格好のバイクは世に存在しなかった。ホンダは50年代後半に、当時のオートバイでもスクーターでもないような、そして、それらのどっちでもあるとも見える新コンセプト車によって、二輪の新たなスタンダードを創った。

そして、その“新二輪”はついに世界の街の景色まで変えてしまうほどに、地球上で支持されていく。スーパーカブは、単にホンダ史を飾るだけモデルだけでなく、二輪史における記念碑的なプロダクトなのだ。

そんなスーパーカブと、このフィットの共通点は、おそらく「クロスオーバー」である。フィットもまた、セダンでもバンでもない、そして、そのどちらでもあるような格好をしている。経済性や“生活ギア”としての使い勝手を最重視しているところも同じだ。

そんなフィットは、今回、ハイブリッドの考え方や適用を大きく変えてきた。省燃費(化石燃料をなるべく使わない)にトコトンこだわったのであろうが、電動車(EV)として走り出し、時速60kmまでは基本的にエンジンを回さず、電動状態をキープする仕様だ。エンジンの働きから見ると、走っているといつの間にか、必要に応じてエンジンが掛かり、そしてその“必要性”が薄れるとすぐにエンジンは止まるような仕組み。運転者はエンジンがどう働いているかをモニターなしに感知することはなかなか困難で、この点では、二つのパワーソースはきわめてシームレスにつながっている。この点でのスムーズさ、違和感なしのマトメは評価できる。

一方、そうしたハイブリッド仕様のほかに、1.3リットルと1.5リットルのエンジンを搭載したバージョンもあり、これらも独自の“色”を主張している。ハイブリッドは、システムとして重量増が110kgほどあるため、これと乗り較べると、エンジンのみ搭載車の車重の軽さはやはり感じる。1.3リットルと1.5リットルのエンジン車の比較では、エコタイヤ装着のせいか、1.3リットルの方が低速域で、乗り心地面での微妙な硬さがあった。

今回の試乗は厳密にはプロトタイプ車(市販前状態)であり、走った場所もテストコース内に限られたが、この条件内で、乗り心地とドライブしての充実感(キビキビ度)だけでパーソナルチョイスを行なえば、私は1.5リットルを選択するだろう。
車重のあるハイブリッド仕様は、その分足も固めてあり、コーナーでの軽快感においては軽い1.5リットルに及ばない。ただ、まだ価格も発表されておらず、また、一般市街路、そして他車と一緒に走るような状況も未テスト状態なので、各グレードの比較はこの程度にとどめたい。

新フィットのデザインだが、これはスーパーカブも意識したのか、あえて大きく変えないということを選択したようだ。フィットはフィットでいいのだ!こういうメーカーの宣言が聞こえてくる、誰でも新型フィットとわかる(であろう)造型で、こういうモデルチェンジもあっていいと思う(VW『ゴルフ』も、今回そうやっている)。

ただ、誰でもが受け入れやすい造型、使い勝手でありたいとするなら(スーパーカブなら)、全高や地上からのシート座面の位置はもう少し高い方がいいのではないかというのが私見である。もっとも、そういうクルマは、すでに歴史を持つフィットとは別の次元で考えるべきものかもしれないが。

■5つ星評価
パッケージング:★★★☆(3.5)
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

家村浩明|モータージャーナリスト
雑誌編集を経て、1984年頃よりクルマ関連の原稿執筆を開始。50~60年代からク
ルマについてはウォッチしており、時代や状況と連動してのクルマの変化は、ジ
ャーナリストとしての注目ポイントのひとつ。著作に『自動車コラム大全 1984
~1989』『ル・マンへ~レーシングNSXの挑戦』『プリウスという夢』など。

《家村浩明》

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