【メルセデスベンツ Aクラス 試乗】"A"gressiveを具現化した走り…松下宏

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メルセデス・ベンツAクラス
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3代目のメルセデスベンツ『Aクラス』はこれまでと異なるコンセプトで作られた。従来のモデルはサンドイッチ構造プラットホームを持つスペースユーティリティ系のクルマだったが、新しいAクラスはプラットホームを変更し、全高の低いスポーティなパッケージングに変わった。

従来のAクラスのユーザーは高めの全高を持つBクラスに任せ、Aクラスは新たにスポーティな方向を目指すようになったのだ。今回のモデルでは、AクラスのAはアグレッシブのAであると説明されている。

外観デザインは大きめのスリーポインテッドスターが配置されたフロントグリルが目をひく。これは本来はスポーツモデル用のデザイン手法だったはずだが、最近は『Bクラス』や『Cクラス』など幅広い車種に採用されるようになった。

全高を抑えただけでなくて全幅も拡大してワイド&ローのプロポーションを持つほか、傾斜を強めたフロントピラーがスポーティさを強めている。

インテリアはヘッドレストレイント一体型のしっかりしたスポーツシートが特徴で、全体的な雰囲気というか見た目の質感も大きく向上させている。このあたりはさすがにメルセデスベンツで、上級モデルのようなラグジュアリーさではないが、エントリーモデルのAクラスながら安っぽさは感じられない。

搭載エンジンは直列4気筒1.6リッターの直噴ターボ。排気量をダウンサイジングした直噴ターボ仕様のエンジンは、今やヨーロッパではスタンダードとも言えるもので、メルセデスベンツに限らず各社の幅広い車種にこの仕様のエンジンが搭載されている。

1.6リッターの直噴ターボ仕様エンジンにはよりパワフルなものがたくさんあるので、Aクラスの動力性能は際立ったものではないが、実際に走らせてみると数値以上にスポーティな印象を受けた。

これはドライブモードの選択によっても変わり、Sモードで走らせたときには、かなりスポーティな走りが得られるようになる。

Eモードを選んで走ると、全体にマイルドな感じの走りになり、7G-DCTの変速フィールも穏やかなものになる。EモードではデュアルクラッチではなくCVT車に乗っているのかと勘違いしそうなくらいに滑らかな走りが味わえる。

この7G-DCTはステアリングコラムの向こう側にセレクターレバーがあり、変速はステアリングの裏にあるパドルで操作する。セレクターレバーは『Sクラス』から採用が始まった方式だが、Aクラスにまで広がってきたので、メルセデスベンツは大半の車種にこの方式を採用する方針なのだろう。

「A180ブルーエフィシェンシー」と同「スポーツ」の2台に試乗したが、2台の試乗車は足回りに違いがあり、スポーツには専用にチューンされた足回りが用意され、タイヤも18インチになっていた。

このためスポーツはシャキッとした走りが得られるのだが、乗り心地はかなり硬めの印象になる。日常シーンでの快適性を考えたら、17インチタイヤを履く標準車を選んだ方が良さそうだ。

スポーツの足回りが必ずしも好感の持てるものではなかったのは、最低地上高がたったの95mmしかないことも影響しているだろう。先に発売されたBクラスの最低地上高が105mだったのにも驚かされたが、Aクラスの最低地上高は更に低い。走行シーンによってはボディの下回りを擦ることに注意が必要だ。

また室内の騒音レベルはやや高めの印象。室内に騒音がこもるような感じがあり、これはもうひと工夫必要な部分だと思う。

Aクラスには快適装備も安全装備も全体に充実した仕様が用意されている。ただ、今や常識になりつつある追突軽減ブレーキは装備されていない。前の車両に接近したときの警報が用意されているだけだ。競合車のボルボ『V40』や新型『ゴルフ』がさらに進んだ仕様を備えることを考えると、やや物足りない印象を受ける。

標準のA180ブルーエフィシェンシーで284万円、同スポーツで335万円という価格は、まずまず手ごろな水準ではある。ただ、後から登場してきたボルボV40やゴルフが更に割安な価格を設定している。Aクラスはブランド代が高くなるようだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

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