VWのEモビリティ戦略…CHAdeMOを採用しない3つの理由

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VW電気駆動担当グループ執行役員 ルドルフ・クレープス氏
  • VW電気駆動担当グループ執行役員 ルドルフ・クレープス氏
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  • VW電気駆動担当グループ執行役員 ルドルフ・クレープス氏
  • VW電気駆動担当グループ執行役員 ルドルフ・クレープス氏
  • VWは30日、「VWグループのEモビリティ戦略」についてのプレゼンテーションをおこなった。
  • VWは30日、「VWグループのEモビリティ戦略」についてのプレゼンテーションをおこなった。
  • VWは30日、「VWグループのEモビリティ戦略」についてのプレゼンテーションをおこなった。
  • VWは30日、「VWグループのEモビリティ戦略」についてのプレゼンテーションをおこなった。

普及が始まったばかりの電気自動車。その未来は、世界各国の政府の意向が強く影響することが、VWの電気駆動担当グループ執行役員へのインタビューを通して見えてきた。

5月30日、「VWグループのEモビリティ戦略」のメディア向けプレゼンテーションの後、別室でVWの電気駆動担当グループ執行役員ルドルフ・クレープス氏へのグループインタビューが実施された。

CHAdeMO規格を採用しなかった3つの理由

日本の急速充電規格であるCHAdeMOに対して、VWやGMなどの欧米メーカーはコンボ方式を採用すると発表した。実用化の点で先行するCHAdeMOではなく、あえて独自規格を立ち上げたのは3つの理由があったとクレープス氏は説明したのだ。

「経緯をふり返れば、我々欧州メーカーが電気自動車の開発に取り組んだ時、ベンチマークとしてCHAdeMO規格を調査しました。そのときの評価は、技術的にはよくできている。ただ、それを実装するとなるとコストがかかる」と最初の理由を挙げた。

「二番目の課題点としては、CHAdeMOはクイックチャージを行う充電口とまた別のプラグで従来型の充電を行う。それに対して、コンボはひとつの充電口でクイックチャージと従来のチャージに対応できる」とコンボ方式の有利さを挙げた。

「三番目には、ソフトウエアのプロトコルの問題がありました。車両本体と充電システムとの間で情報のやりとりをするソフトウエアのプロトコルですが、それが私たちのフォローしやすいものがCHAdeMOではなかったということです」と三つ目の理由を説明した。

「コストの問題が1点、ついでパッケージの問題、3番目がソフトウエアの問題。それがCHAdeMO規格を採用しなかった理由です」とクレープス氏は述べたのだ。

◆Eモビリティのリリースはマーケットの事情に合わせて柔軟に行う

VWグループでは2013年の中頃に「e-up!」、年内中に「Golf Blue-e-Motion」を欧州で発売開始すると明かしたが、その詳細やその後の計画などは、「まだ話せる段階まで至っていない」と言う。

「欧州に関しては、具体的な販売目標をお話することはできません。競合他社との関係もありますし、マーケティングにかかわるセンシティブな話だからです」とクレープス氏。

しかし、そうした中でも「私どもの電気自動車の計画は、きわめて柔軟に対応できるものになっている」と言う。なぜなら、電気自動車に関しては、世界中のマーケットで様々なインセンティブが存在し、その影響が大きい反面、その継続性や規模などの将来性があまりにも不透明だからだ。

「それぞれのマーケットがどういう状況になるのかというのは、ある意味、水晶玉を覗いて未来を予測するのと同じくらい難しいので、柔軟な対応が必要になります」

そうした状況もあって、「それぞれの地域のマーケットにおいて異なった戦略もありますし、どういうものを売るのかを検討しないといけません。検討は行っていますが、最終決定に至っていないというのが現状です」と、販売計画策定の難しさを説明した。

◆中国政府の動向に対するVWの見解

現在、EVだけでなく自動車産業にとっての最重要マーケットとなっている中国。その中国政府が、この春に打ち出した2020年までのEVとPHVの普及計画に対して、VWはどのように対応するのか? という質問にクレープス氏は「かなり厳しい目標になる」と率直な感想をもらした。

「中国政府の立てた2020年に500万台の計画は非常に達成が難しい。ただ、政府が5カ年計画という枠組みを構築したのだから、なんとかそれを達成しようと、今後も取り組みを続けていくことになる」と、一方では意欲も見せたのだ。

「中国政府のこうした取り組みは、新たな自動車のエネルギー源を積極的に探っていこうという姿勢の表れだと、私どもは捉えています。現状、中国は世界最大の石油輸入国です。ですが、中国政府は今後、今までのように石油を輸入し続けることは難しいと考えています。そのため自動車のエネルギー源に関しては、電動自動車などの割合を増やしていこうと考えています」
 
石油の輸入が難しくなっても中国には石炭という資源がある。そのときにEVが普及していれば、ガソリンではなく石炭で発電した電気でクルマを走らせることができるというわけだ。

「また中国では、長期的な取り組みとして再生可能エネルギーの利用をもっと増やしていこうという積極的な動きも見られます。太陽光発電や水力発電、風力による発電です。石油や石炭による発電から、発電自体を再生可能エネルギーに徐々にシフトしていこうという長期的な動きが見て取れます。新たな世代の人には、新たなエネルギー源による、新たなモビリティを提供しようという、長期的な視野があると私どもは見ています」

グローバルな企業として、世界中のマーケットや政府の意向を知るVW。そのVWがEモビリティに積極的なのは、そうした知見を鑑みた結果として「EVの必要性」を認めたからに違いないだろう。

《鈴木ケンイチ》

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