ハイブリッドや電気自動車が走り回り、SUVも流線型で洒落たスタイルをまとうようになった昨今、ここまで無骨に生き抜いているクルマは少ない。
ほぼ直角に立ったフロントウィンドー。鉄板そのものの雰囲気を残すボディ。しかも今回試乗した限定車「ARCTIC」ときたら、ボンネットにステッカーが貼ってある。それも「足跡」の。あり得ない演出。
しかし、オフロードやスノーで童心に返ってたわむれるという、遊び心が激しく揺さぶられるのは間違いない。
ぐっとくるのは、その高い運転席と、FFから4WDへと切り替えるレバーだ。いまや電子制御され、ちょんと触れば切り替えられるのに対し、がっちがちに固くて、ややもすれば入れ損ねてエンジンが空転する。なんだこれ? あまりのアナログさに愛しさがかき立てられ抱きしめたいくらいだ。ハイテクやら、ソツなくやら、万人受けやらとは別世界。我が道を行く姿勢がすこぶるかっこいいのである。
試乗は敢えて私が不得意とする雪道を選ぶ。正直、雪での走破性がいいとか悪いとか論じれるレベルではないのだが、このビッグボディでの長距離移動がすこぶる快適で、4WDにしたときのUターンががくがくしちゃって笑ってしまい、そしてスタッドレスで走ったときの安定感と安心感はたまらなくよかった。特に4WDにしたときの燃費は、昨今の平均からいくと目を見張る悪さだが、だからどうした。
この楽しさにお金を払ってなにが悪い。化石燃料がある限り、こういうクルマにはがんばってもらいたい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/エッセイスト
女性誌や一般誌を中心に活動。イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に精力的に取材中するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。JAF理事。チャイルドシート指導員。国土交通省 安全基準検討会検討員他、委員を兼任。