当初、4代目『エクスプローラー』に、2リッターの直噴ターボエンジンを積むプランがあることを知ったときには、いくらダウンサイジング志向の世の中にあっても、ちょっと行き過ぎのような気がした。
エンジンスペックをそれなりに引き上げることは可能だろうが、ましてや全長5m超、全幅2mの2tを超える車体。先入観からして、とてもまともに走りそうには思えなかったし、実際これまで体験した同類の小排気量の直噴ターボ車は、過給が十分に得られない低速域では扱いにくいものが少なくないように感じていた。
ところがエコブーストは、予想よりもはるかに上手く仕上げられていた。
ゼロ発進での最初の動き出す部分こそリニアな自然吸気のV6におよばないが、そこから先の中間加速では力強いトルク感があり、車体がいくぶん軽いこともあって、一定の車速に達するまでの所要時間はV6モデルよりも明らかに短い。また、あまり直4っぽくない重厚な音質のサウンドもクルマのキャラクターに相応しいものだ。
ご参考まで、エンジンスペックは、V6では最高出力が216kW(294ps)/6500rpm、最大トルクが345Nm(35.2kgm)/4000rpmであるのに対し、エコブーストはそれぞれ179kW(243ps)/5500rpm、366Nm(37.3kgm)/3000rpmと、最大トルク値で上回り、発生回転数も低い。
10・15モード燃費については、V6の7.6km/リットルに対しエコブーストは8.1km/リットルと、それほど差は大きくないのだが、厳密に計測していないものの、印象としては、実燃費ではもっと差がつきそうな感じだった。
また、エコブーストはFFのみの設定となっているが、実は北米市場での販売では、日本仕様には設定のないV6のFFも含め、約7割方がFFとのことで、納得である。
4WDと右ハンドルにこだわらなければ、このクラスのSUVあるいはミニバンを求める人にとって、エコブーストという選択肢は、なかなか合理的で賢明かと思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年富山県滑川市生まれ。学習院大学卒業後、生来のクルマ好きが高じて自動車メディアの世界に身を投じ、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスへ。近年はWEB媒体を中心に活動中。「クルマ好きのプロ」として、ユーザー目線に立った視点と幅広い守備範囲を自負する。