【池原照雄の単眼複眼】プラットフォームの限界克服を狙う日産の新設計技術

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ゴーンCEO(2月27日、日産テクニカルセンター30周年記念式典)
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  • モジュールの組み合わせにより、小型車から大型車、SUVのような車高の高い車まで、効率よく高度な要求性能レベルに設計できる「日産CMF」
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◆車両を5つのモジュールに大別

日産自動車が新しい車両設計手法「CMF」(コモン・モジュール・ファミリー)を導入した。共用化が可能な車両の部位を4つに分け、これらに電子部品の統合体を加えた合計5つのモジュールを車種に応じて組み合わせることで、部品の共用化を大幅に高める。20年余りにわたり共用化手段として定着していたプラットフォーム(車台)方式の限界を克服する設計技術であり、コスト・商品力の両面で競争力強化につなげる。

電子部品以外のモジュールは(1)エンジンやミッションなどの「エンジンコンパートメント」、(2)前部の車体骨格部分である「フロントアンダーボディ」、(3)インパネやステアリング、シートなどの「コックピット」、(4)車体の床部分である「センター・リヤアンダーンダーボディ」---の4つで構成する。

このうち、プラットフォーム方式では(2)と(4)のフロントおよびアンダーボディを共用化するのが一般的となっている。これらの部分はまさに車両の「台」に相当しており、プラットホームが「車台」と表現されてきた所以である。

◆車型やセグメントを超えて……

日産のCMFでは、外観デザインを決定づける車体の上部骨格およびドアやルーフなどの外板部分を除けば、ほぼすべての部品をモジュール化している。

それぞれのモジュールは強度や剛性を左右する重量や、サイズなどによって複数用意される。これによりミニバン、SUV、セダン、ハッチバックなどの車型により、最適な組み合わせを選択する。モジュールの共用化は「Bセグメント」「Cセグメント」といった同一サイズ内のみならず、セグメントを超えても実現できるようにする。モジュールの総数は将来、合計で60弱程度のバリエーションになるという。

プラットフォームは「共用化した車台に個々の車両の“上屋”を乗せる方式」(山下光彦副社長)であり、共用化にもおのずと限界がある。つまり、上屋部分で共用化を図ろうとすると、ミニバンなど強度が必要で、その分重量が重くなる部品を、あえてセダンでも使うということになる。それは軽量化=燃費性能向上という時代の要請には逆行する。

◆ゴーン社長、パートナーとの共用化も推進

これに対してCMFでは軽量化を損なうことなく、飛躍的に部品の共用化を増大させることも可能だ。開発に携わっている坂本秀行執行役員によると、「プラットフォーム方式では最大40%だった共用化率を、同80%まで高めることが可能」という。

日産は2013年からCMFによって開発した新モデルの投入を始め、同年のグローバル販売のうち12%程度を占めるようにする計画だ。さらに、本格展開が進んだ16年以降は58%までに引き上げる。

ただし、すべてのモデルがCMF方式となるわけではない。スポーツカーや高級セダンで採用されるFR(後輪駆動車)や、ピックアップトラックなどフレーム系は除外する。これらの車種は独自の設計の方が性能を引き出しやすく、設計効率もよいという判断だ。

日産はCMFによって、設備投資、部品調達コスト、開発コストのすべてにおいて、従来比で28%前後の削減が可能と試算している。こうしたコスト競争力だけでなく、商品力の引き上げも狙う。坂本氏は「従来のように先進技術は(高級車の)『フーガ』から採用ということでなく、タイムラグなしで幅広い車種に展開できる」と見ている。

カルロス・ゴーン社長はCMFを「それぞれのブランドの独自性を損なうことなくコストや投資の削減を可能とする手法」と評価しており、「ルノー、ダイムラーといったアライアンスパートナーとの部品共用化推進」にも生かしたいという。

《池原照雄》

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