【池原照雄の単眼複眼】マツダ、CX-5 が導く黒字体質

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マツダCX-5発表会、山内社長
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  • マツダCX-5ディーゼル
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◆生産量に連れて赤字が拡大する

マツダが環境対応を軸とした新技術群「SKYACTIV」を全面的に採用したSUV『CX-5』を発売した。「静粛性、粘りのある走り、圧倒的な加速」と山内孝社長が自賛するディーゼル車に関心が集まる。だが、それ以上に注目されるのは、同社が2006年から取り組んできた「モノ造り革新」の成果が問われるモデルになるということだ。業績立て直しへの「社運をかけた」(同社長)新モデルが発進した。

マツダの今期(2012年3月期)連結純利益予想は2月初めに、1000億円の赤字と従来予想より下方修正された。円が最高値に張り付いた第3四半期(10~12月期)は、359億円の繰延税金資産の取り崩しを行ったことも加わり、純利益の赤字額は729億円と一気に膨らんだ。

同社は、今期のグローバル販売計画のうち、国内生産比率が68%に達している。業界最多の300万台を国内生産維持ラインと掲げるトヨタ自動車でも、国内比率は4割(11年暦年実績)であり、マツダの国内一極依存は際立っている。1ドル70円台後半の為替水準では、生産量に連れて赤字が拡大する事業構造であった。

◆「一括企画」によるモノ造り革新

「であった」と過去形で表現するのは、CX-5の登場による。山内社長は、同車の発表会見で「すべての通貨で利益が出せるようにした」と強調した。CX-5は防府工場(山口県)で年16万台を生産、その9割強を約100か国に輸出する計画だが、超円高下でも通貨オールマイティで利益をもたらすクルマづくりができたというわけだ。

CX-5は、SKYACYIV技術の開発と表裏一体で推進してきた「モノ造り革新」によるプロセスが全面的に採用された初のモデルでもある。生産部門だけでなく開発、購買などを含む横断的な取り組みにより、従来の開発・生産手法に比べ2~3割のコスト削減を実現するのが、同社のモノ造り革新である。

そうした各部門が連携した開発・生産体制は、いまや目新しいものではないが、推進手法に同社ならではの工夫がある。それは「革新の土台」と位置付けている「一括企画」という手法だ。今後、5~10年に求められる商品・技術を想定し、その間にロードマップした商品すべてを、ひと括りに企画するのである。

◆スモールプレーヤーならではの技

これにより、各モデルで共通化できる「固定要素」と、個々のモデルの特質を引き出す「変動要素」を明確にする。固定要素は設計上の「標準構造」に、また生産面では「標準工程」に反映され、全車種をどのラインにも流せるよう、極めて柔軟性の高い生産体制につなげるようにしている。標準構造は、量産効果と汎用設備の多用による設備投資の抑制ももたらす。

こうした開発・生産体制は、多くの車種を抱えるフルラインメーカーでは、車両サイズごとに展開はできても、全社一括というのは難しい。マツダが年生産120万台規模の「スモールプレーヤー」(山内社長)だからこそ、できる技であろう。

もっとも、通貨オールマイティのCX-5とはいえ、年間16万台では同社の販売の1割強でしかない。損益改善に本格的に寄与させるには「当然、(モノ造り革新による車両の)販売台数を増やさねばならない」(開発担当の金澤啓隆専務執行役員)。既存車種を含めた革新の全面浸透には数年を要すことになろうが、13年度に操業を始めるメキシコ工場の立ち上げによる国内依存の軽減と併せ、「黒字体質」への道筋は見えてきた。

《池原照雄》

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