【ホンダ PHVプロトタイプ 試乗】市街地+高速での電費達成率は70%程度か

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インスパイアをベースとしたホンダのPHV実証実験車
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ホンダがスマートホームの実証実験にで運用中のプラグインハイブリッドカー(PHV)。バッテリーに蓄えた電力で走行可能な距離は、JC08モード走行時で25kmとのこと。果たして実走行ではどのくらいになるのか、試乗の際に確かめてみた。

メインバッテリーの容量は6kWhと、純電気自動車である日産『リーフ』の約4分の1、三菱自動車『i-MiEV』の約3分の1と大型。ただ、他のハイブリッドカーと同様、バッテリー保護のためこの容量をフルに使うことはなく、一部のみを使うという。ステートオンチャージ(バッテリーのフルキャパシティに対する実際の使用割合)は非公表だが、『インスパイア』ベースの重量級ボディを25kmも走らせるというスペックから、トヨタ『プリウスプラグインハイブリッド』の5割(30~80%の範囲で使用)よりかなり広いものと推測できる。EVのようにスタートは100%充電状態である可能性もある。

コクピットのインパネにはEVの走行可能距離が表示されている。減算方式のディスプレイで、充電完了状態のスタート時は25km。EVには厳しいとされるエアコンオン状態にして実際に走りだしてみる。エンジンはもちろんかからず、最大出力120kWのパワーユニットは巨大なセダンボディを軽々と加速させるとともに、走行可能距離も実に威勢よく減っていく。が、加速を終えてクルーズ状態になると一転、ほとんど減らなくなる。

ブレーキはホンダの量産車ではまだ使われていないブレーキ・バイ・ワイヤによる協調回生ブレーキ。「効きはともかく、市販車として発売するにはブレーキフィールのチューニングがまだまだ。さらに煮詰めていく予定です」(本田技術研究所関係者)というが、普通に運転しているぶんには非常に自然なフィーリングに仕上がっていた。低速時に踏力を加減したときに若干のギクシャクがあり、「ああ、このことか」と気づく程度だ。

市街地の次は、短距離ながら高速道路の走行。東京外環自動車道和光インターチェンジのETCを通過してフル加速を試みる。ホンダPHVのバッテリーはEVに比べて小さいため、モーターが最大トルクを発生させる際、バッテリーからの電力だけでまかなうことはできない。2リットル直4アトキンソンサイクルエンジンが発電を開始し、バッテリー電力をアシストする。そのさいの加速力は大したもので、交通の流れに乗るまでの到達時間はスポーティサルーンとしても充分通用するであろうレベルだった。

巡航時はエンジンが停止し、ふたたびEV走行に戻る。追い越し時に少し強めにアクセルを踏んでみたりしたが、明確な急加速を行わない限りエンジンはかからなかった。ブルーエナジー社製のリチウムイオン電池パックの出力は、体感的には50kW程度はありそうであった。

高速道路から出るときなどの減速は走行可能距離を伸ばすチャンスだ。強力なモーターは強力な発電機になり、大型の電池は短時間で大量の電力を蓄えることができる。インスパイアボディは大型であるため空気抵抗も大きい。100km/hから減速する場合、アクセルを離して空走すると空気抵抗に運動エネルギーを奪われてもったいないことこのうえない。出口路あたりで回生ブレーキで発電しながら一気に低速まで落として、空気抵抗の少ない領域で巡航するのが美味しいというものだ。

果たして、距離にして約17kmの試乗を終えた段階ではバッテリー電力には充分余剰があり、EV走行可能距離の残量は4.6kmであった。高速流入時や追い越し時などに数回エンジンがかかっており、その発電分は差し引く必要があるが、気温30度超、エアコンON、市街地での若干の渋滞、高速走行ありという条件でJC08モード値の7割程度は走れそうなイメージである。エネルギーマネジメントはかなり熟成されているものと思われる。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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