フィアットは2010年9月をもって、アルファロメオの『ブレラ』および『スパイダー』の生産を終了する。
ブレラは、02年ジュネーブモーターショーでイタルデザイン-ジウジアーロが公開したプロトタイプに端を発する。スタイルの随所には、のちの05年に発表される『159』のモティーフが隠されていた。
ジウジアーロは、このブレラ・プロトタイプによって、03年デトロイトモーターショーで「コンセプトカー賞」を受賞。続く04年には、イタリアの著名な工業デザイン賞「コンパッソ・ドーロ(金のコンパス)を獲得した。フィアットは量産化を決定。生産はピニンファリーナ工場に委託されることになった。
生産型は05年ジュネーブモーターショーで発表された。車台はベースの159と同じく、GMと共同開発された「プレミアム・プラットフォーム」。プロトタイプにおけるガルウィング・ドアや、特異な形状のドアミラーこそ一般的なタイプに変更されたものの、基本的なプロポーションは継承された。マーケットの要請に沿って、先代にあたる『GTV』には無かったディーゼル仕様もラインナップに加えられた。また、ジウジアーロにとっては、久々の量産アルファロメオ作品である。
いっぽう『スパイダー』は、このブレラをベースに造られたもので、06年に発表された。ブレラ同様、生産はピニンファリーナに委託されている。ブレラ、スパイダーとも、当初はスタイリッシュなスポーツモデルの登場としてマスコミで話題を呼んだ。
しかし、ドイツのプレミアムカーを照準にした大きなボディサイズや、最大で1.6t級に達する重量は、往年のアルファロメオの記憶から軽快な走りを望むファンからはけっして歓迎されなかった。昨09年におけるブレラ/スパイダーの生産台数合計は3159台で、08年の6329台からすると、半分以上の落ち込みだった。
09年初頭の段階では、ブレラ/スパイダーは2011年まで生産が継続される予定だった。今回、生産終了が前倒しされた背景には、アルファロメオ全体の販売不振がある。今年初頭「アルファロメオには、ドイツのライバルに対抗するため、コストをかけすぎてしまった」と発言したセルジオ・マルキオンネCEOの大鉈が振るわれたかたちだ。フィアットはすでに、『GT』の生産も終了している。
ブレラ、スパイダーの生産終了は、ピニンファリーナにとっても意味が深い。両モデルの生産終了にともない、同社が本拠地イタリアで生産している車種は、フォード『フォーカスCC』のみとなる。それも2011年に生産終了する予定だ。それによって、ピニンファリーナの長年にわたる受託生産事業は、スウェーデンでのボルボとの合弁工場を除き終止符を打つことになる。
なおブレラ、スパイダー、GTとも、後継車種の計画は発表されていない。これによって、欧州におけるアルファロメオの量産車ラインナップは、『ジュリエッタ』の先代である『147』が継続しているにせよ、事実上『MiTo』、ジュリエッタ、159の3車種のみとなる。