【池原照雄の単眼複眼】日産EV、スマートグリッド対応で世界を視野に

エコカー EV
スマートグリッドにおいては移動式電池としての役割を担うEV
  • スマートグリッドにおいては移動式電池としての役割を担うEV
  • 日産、日立、オリックス、オリックス自動車が共同で実施する「放電対応EVを用いたエネルギーマネジメントシステム」の概要
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日立などと放電EVのマネジメントシステムを確立

日産自動車が日立製作所などとともに、電気自動車(EV)から家庭やビルなどに電力を供給するエネルギーマネジメントシステムの技術開発を推進することになった。電気エネルギーを制御して効率よく消費するスマートグリッド(次世代送電網)へのEV組み込みをにらんだものであり、世界でEVを普及させるための基盤技術となる。

この技術開発は、新エネルギー・産業総合技術機構(NEDO)が推進する「蓄電複合システム化技術開発」の一環として取り組む。横浜市で実証試験を行いながら今年度から2012年度までの3か年で開発を進める。

世界各国が開発や実証試験を進めているスマートグリッドでは、EVを蓄電池として活用するのが、ひとつのポイントとなる。EVに搭載するバッテリーを配電ネットワークに組み込み、家庭やビルなどへ電力供給する貯蔵源とすることができるからだ。

◆バッテリーの耐久性がカギに

日産などが進める今回の開発は、「放電対応EVを用いたエネルギーマネジメントシステム」。経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム実証地域」として認定された横浜市の「横浜スマートシティプロジェクト」の一部にも位置づけられている。

技術開発では日産がEVのバッテリーから家庭やビルなどに放電が可能となる技術を担当する。現行のEVは、もっぱら電力を受け取る側であり、充電器の電力の流れも基本的には一方向だけとなっている。

放電EVでは安全対策が重要となるが、日産は「充放電を繰り返すことによりバッテリーの劣化が早まるので、バッテリーの耐久性の追求」も大きな課題と指摘している。同時に日産は、充電器や家庭の電源への放電を通信で制御できる技術開発にも取り組む。

一方、日立は太陽光発電と定置型の中型蓄電池を組み合わせた「エコ充電システム」、さらにEVとエコ充電システムを連携させる「エネルギーマネジメントシステム」の開発にも取り組む。太陽光を活用するエコ充電システムには、EV用の充電スタンドも組み込み、スタンドではEVからの放電もできるようにする。

◆スマートグリッド対応でも先行目指す

放電対応EVは、地域社会でカーシェアリングすることも念頭に置いている。このため、プロジェクトにはオリックスおよびオリックス自動車も参画、充電スタンドを管理するセンターと連携しながら、EVの予約・配車を行う管理システムの開発に取り組む。

実証試験では戸建住宅や集合住宅・ビル、さらに充電スタンドに接続する放電EVのバッテリーや定置型蓄電池を効率的に運用し、地域一帯のエネルギーマネジメントの実用可能性を検証していく。太陽光発電による再生可能エネルギーの利用率向上も図ることにしており、世界でも最先端のスマートグリッドの実験場となる。

NEDOは、開発するシステムの国際展開も視野に入れており、技術の標準化についても検討を進めていく。日産は量産タイプのEV開発では先頭を走っており、将来のEVに欠かせないスマートグリッド対応でもアドバンテージを得る構えだ。

《池原照雄》

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