【池原照雄の単眼複眼】新経営体制2年目で攻めに転じるトヨタ

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ミシシッピ工場(2009年7月)
  • ミシシッピ工場(2009年7月)
  • ミシシッピ工場(完成予想図)
  • ミシシッピ工場(2007年、起工式典)
  • カローラUS仕様
  • カローラ中国仕様(北京モーターショー10)
  • トヨタ・エティオス

海外プロジェクトの凍結を相次いで解除

トヨタ自動車が2008年の金融危機後に凍結していた海外工場の建設を相次いで再開、攻勢に転じる。グローバルではなお余剰設備を抱えるものの、成長が続く新興諸国などでの拡充を図り、現地化の推進で為替変動にも強い体質とする狙いだ。

トヨタは今年5月、10年3月期の連結業績が黒字転換して最悪期を脱したのを受け、生産体制の再構築策を打ち出した。今世紀初頭から金融危機の08年秋まで、ハイペースで生産体制を拡大してきたものの、金融危機を境に世界の市場構造が大きく様変わりしたためだ。

再構築では「新興国への積極的な投資」(豊田章男社長)がひとつの柱になる。金融危機時点で、トヨタは中国(2拠点)、インド、ブラジルの新興3か国でいずれも新工場の準備を進めていた。

このうち、インドの第2工場と中国の四川一汽トヨタの成都工場(移転増強)については凍結せず、当初計画に沿って建設を進めた。成都は今年5月に新工場が稼働、インド第2は今年末に同国市場向けに開発した新小型車『エティオス』の生産に入る計画だ。

◆近くブラジル第2工場の着工も発表

一方、中国では四川一汽トヨタの長春新工場が08年10月に起工式を行った後、凍結状態になっていた。トヨタは今年4月、同工場の稼働開始を12年前半に決定し、本格的な工事に着手した。

長春新工場は『カローラ』を生産、稼働時の能力は年10万台とする。同工場が完成すれば、トヨタの中国での生産能力は92万台となる。もっとも、中国では最大手の独VW(フォルクスワーゲン)や韓国・ヒュンダイ自動車のほか、日産自動車、ホンダといった日本勢も積極的な拡大策を打ち出しており、トヨタも引き続き能力増強を図ることになろう。

ブラジルでは08年7月に第2工場の用地を取得、その時点で11年以降には年15万台規模の能力をもつ工場とする計画であった。金融危機によって建設が見送られていたものの、近く着手を発表する段取りになった。ブラジル第2もインド同様、同国向けに開発中の新小型車を投入し、中間層を中心とする顧客の開拓につなげる。

◆米ミシシッピはカローラに切り替え

生産体制の再構築策では、日米欧の先進諸国について「為替変動に強いフレキシブルな生産体制」(豊田社長)とする方針を掲げている。米国では北米7番目の車両工場となるミシシッピ工場の建設が凍結されていたが、6月17日に、工事再開と11年秋の操業開始を決定した。

07年2月に進出を発表した同工場は当初、SUV『ハイランダー』の生産を計画していたものの、建設再開に当たりカローラに切り替えた。米国では今年4月、GM(ゼネラルモーターズ)との合弁工場だったNUMMIが閉鎖となり、同工場で生産していたカローラは日本からの供給で補っている。

ミシシッピ工場の稼働により、現地供給比率を回復させて為替変動にも強い体質とする。一連の凍結解除は、金融危機後に身を縮めていたトヨタが反転攻勢に舵を切ったことを示す。2年目に入る新経営体制の明確な意思表示でもある。

《池原照雄》

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