フォルクスワーゲンが日本市場に投入したエコカー『ポロ TSI』。ターボで過給された排気量1.2リットルエンジンは、大排気量エンジンを小排気量過給エンジンに置き換えて燃料消費を抑えるという、いわゆる「ダウンサイザー」と呼ばれるカテゴリーのものだ。
新型ポロTSIの10・15モード燃費20km/リットルという数値は、絶対的には驚くほど高いわけではないが、日本のモード燃費が苦手な輸入車としては大健闘と言える数値。燃費データベースサービス「e燃費」では、同17km/リットルの自然吸気エンジン版『ポロ1.4』が約15km/リットル。新型のポロTSIがその実燃費値を超えるのは確実なところだろう。
フォルクスワーゲングループで直噴・過給によるダウンサイザーエンジンの開発を主導しているヘルマン・ミッデンドルフ博士は、「ガソリンエンジン単体でもハイブリッドカーに匹敵する燃費を実現することは可能。(ポロTSIに搭載される)1.2TSIもすでにそうなっている」と自信を示す。
「TSIは非常に簡素な構造で、生産も容易であるのが特徴だが、エンジン単体の省エネルギー性能ではトップランナー。実際の燃費パフォーマンスは量産車では世界最先端のバルブ制御技術を用いたイタリアのアルファロメオのエンジンより優れている」(ミッデンドルフ博士)
が、TSIにはまだまだダウンサイザーとしての進化の余地があるという。ミッデンドルフ博士は「少なくとも私が定年になるまでに、エンジン開発がお払い箱になることはないと思う」と、冗談交じりに語る。
「まずは、絶対的なキャパシティの削減。ディーゼルは1気筒あたりの容積を小さくするのにある程度限界があるが、ガソリンの場合はフリクションロスのさらなる低減やエンジンマネジメントを高度化させることで、まだまだ小さくできる。1リットルエンジンで『ゴルフ』クラスのクルマを走らせることもできる」(ミッデンドルフ博士)
排気量削減と並ぶソリューションとして最近持ち上がっているのは、気筒数削減だ。実際、ドイツ本国ではポロの1.2リットル自然吸気エンジンは3気筒化されている。
「もちろん気筒数削減はフリクションロスの低減には有効だが、それを推し進めるかどうかは顧客のニーズが決める。クルマにとって快適性は重要だが、3気筒は4気筒より振動、騒音面でどうしても不利だ。それを顧客が嫌がるか、そんなに悪くないと感じるかがビジネスを分ける。ダウンサイジングの限界は、技術よりもビジネスに依存している」(ミッデンドルフ博士)
まだまだ進化するというダウンサイザー。今後、どのようなエンジンが出てくるか楽しみなところだ。