クルマの安全性を全方位で追求する取り組みを「SUBARU ALL-AROUND SAFETY」と称してアピールしているスバル。
これはパッシブセーフティ(衝突安全性能)、アクティブセーフティ(走行安全性能)、プリクラッシュセーフティ(予防安全対策)の三要素から成り、いずれもスバル独自のメカニズムや最新テクノロジーで追求されている。その安全に対する考え方は、前身の航空機メーカー(中島飛行機)から培われたスバルの“伝統”とも呼べるものだ。ここではその歴史から、スバルの安全思想を読み解いていきたい。
◆スバル360でもクラッシュテストを実施
1958年、スバル初の市販乗用車として「てんとう虫」こと『スバル360』が発売された。航空機技術を応用した卵形モノコックボディによって車重はわずか385kg。低価格ながら抜群の走行性能や乗り心地を備え、大人4人が乗車可能であるなど、あらゆる点で高度な「国民車」だったが、その志の高さは安全性を重視したクルマ作りにも見て取れる。
例えば“衝突安全”という概念すら一般的ではない当時、スバル360はすでに社内で衝突試験を受けていた。軽量かつ高剛性のボディ、そしてフロントにエンジンのないRR(リアエンジン・リア駆動)という構造は衝突安全性にも優れていたのだ。
またスバル360をベースに開発され、1961年に発売された軽商用車『サンバー』では、荷室長を稼ぐために運転席を前輪の真上に置くキャブオーバー構造となっているが、こちらもよく見ると、フロントバンパー位置に対して運転席をやや後ろに配置し、衝突安全性に配慮しているのが分かる。当時の商用車としては極めて良心的な設計であった。
◆衝突安全性にも優れた水平対向エンジン
スバル360とその拡大版であるスバル450に続いて、1966年に発売された『スバル1000』(1969年には「スバルff-1」に改称)では、同社で初めて水平対向4気筒エンジンとFF方式(フロントエンジン・フロント駆動)が採用された。このエンジン形式とレイアウトは、現在のスバルのコアメカニズムであるシンメトリカルAWDの基礎ともなっている。
ピストンの動きがボクサーの繰り出すパンチに似ていることから「ボクサーエンジン」とも呼ばれる水平対向エンジンは、スムーズな回転フィーリングや低重心がよく知られるが、同時に衝突安全の面でも優れた特性を備えている。縦置きの直列やV型の多気筒エンジンに対して、水平対向エンジンは前後方向にコンパクトなため、前面衝突時にエンジンが室内に侵入しにくいほか、その搭載位置の低さによって車両下側に潜り込むように設計できるからだ。こうしてみると、水平対向エンジンの安全性は非常に分かりやすい。
さらに2009年に登場した現行5代目『レガシィ』からは、「クレードル構造マウント」と呼ばれるサブフレーム上にエンジンを搭載するようになり、これが操縦性や静粛性のほか、前面衝突時の衝撃吸収性に高い効果を発揮している。
もちろん前面衝突だけではなく、側面や後方といった全方位からの衝撃に備えるため、近年のスバル車には各ピラーやボディ側面フレーム、フロアクロスメンバー等をカゴのように結合してキャビンを取り囲む「新環状力骨構造」を採用。また水平対向エンジンでは歩行者の頭部がボンネットに当たった際の衝撃吸収スペースも確保しやすく、この点も歩行者保護性能が厳しく問われる近年、大きなメリットとなっている。
その結果、国土交通省と自動車事故対策機構が発表した2009-10年の自動車アセスメント(JNCAP)では、5代目レガシィが最高評価のグランプリを受賞。2007年度には現行『インプレッサ』もグランプリとなっており、2008年度には『フォレスター』や『エクシーガ』もトップレベルの優秀車に選ばれるなど、スバル車はいずれも高く評価されている。
また国内だけでなく、米国IIHS(道路安全保険協会)では高い衝突安全性が認められた27台のうち、米国で販売されるスバル車5台すべてが選出されたほか、欧州のユーロNCAPでもレガシィが最高評価の5つ星を獲得するなど、スバル車は世界各国で「最も衝突安全性の高いクルマ」と評価されている。