パトカー専用車 E7、エンジンはBMWディーゼル

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米国カーボンモーターズは22日、2012年に米国市場へ投入するパトカー専用車、『E7』にBMW製ツインターボディーゼルを搭載すると発表した。

ジョージア州アトランタに本社を置くカーボンモーターズは、元警察官のステイシー・スティーブンズ氏が立ち上げた新興メーカー。その会社名が一躍有名になったのは、2009年4月、パトカー専用車の『E7』を公開した時だった。

E7は全米の警察官3000人の意見を参考に、設計段階からパトカーとしての使用だけを想定して開発。GMのシボレー『インパラ』、フォードの『クラウンビクトリア』、クライスラーのダッジ『チャージャー』など、市販車をパトカーへ改造する米国ビッグ3のビジネス手法を、根底から変えた。

E7は、バンパーやルーフにLEDフラッシュライトを内蔵。ナイトビジョン、ビデオカメラ、ボイスコントロール、ナンバープレート自動認識システム、無線装置などを標準装備する。スペースフレーム構造が実現するボディ剛性の高さも特筆ポイントで、120km/hでの追突や40万kmの走行に耐える性能を有している。

細かい気配りもなされており、例えばリアドアは手錠を付けた容疑者が乗降しやすいように逆ヒンジ化。前後シート間の仕切りやリアシートの拘束ベルトといった容疑者護送用の装備が、あらかじめ取り付けられている。

インパネのコンピューターも注目すべき装備。15インチの大型液晶モニターとキーボードを備えており、カーボンモーターズによると、特殊センサーを接続することで大量破壊兵器の発見も可能にするという。

カーボンモーターズとBMWは22日、ディーゼルエンジンの納入契約を締結。BMWはカーボンモーターズに対して、24万基以上のディーゼルエンジンと6速ATを、納入することが決定した。

このディーゼルは、BMWが2009年から米国市場で販売している『3シリーズ』と『X5』に搭載されているユニット。3.0リットル直列6気筒にツインターボを組み合わせ、最大出力265ps、最大トルク58.8kgmを引き出す。最大トルクはガソリン6.0リットルV型12気筒並みで、1100 - 4200rpmの常用域において、全トルクの80%を引き出す設定だ。

E7は6速ATとの組み合わせで、0-96km/h加速6.5秒、最高速250km/hという優れた追跡能力を発揮。それでいて、米国EPA(環境保護局)予想燃費は、12.75km/リットルと優秀だ。SCR(選択的触媒還元)やDEF(ディーゼルエグゾーストフルード)を採用して、全米50州のディーゼル規制に適合。BMWグループのイアン・ロバートソン取締役は、「このディーゼルを24万台以上のE7に搭載することで、年間最大40%、燃費やCO2排出量を改善できる」と自信を見せる。

すでにE7は、2012年からインディアナ州コナーズビルの旧ビステオン部品工場で生産されることが決定済み。カーボンモーターズは、旧ビステオン工場に3億5000万ドル(約315億円)を投資して、施設を全面改装。この資金の一部には、米国政府の低利融資を利用する。

E7は2012年から、警察への納車を開始する計画。価格は公表されていないが、5万ドル(約450万円)程度と予測されており、安くはない。しかし、警察関係者によると、耐久性や改造費を考慮すれば割安だという。発売2年以上前の2009年6月時点で、受注台数は1万台を突破しており、E7の人気の高さを裏づけている。

時を同じくして、GMはシボレー『カプリス』、フォードは『トーラス』をベースにした新ポリスカーを発表。ただし、ディーゼルを搭載するのは、E7のみだ。全米の警察関係者を巻き込んで、3車の激しい受注競争が予想される。

《森脇稔》

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