浜松を“EV特区”に…EVならではの使い方を提案するNPO

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NPO浜松スモーレスト・ビークルシステム・プロジェクト(HSVP)

次世代自動車の本命といわれる電気自動車(EV)だが、フル充電での航続距離の短さという欠点はなかなか克服できない。今年相次いで発表された国産EVは最大で160kmといわれており、フル充電には急速充電でも30分ほどかかる。

それなら無理に長距離を狙わないで、街乗り専用のEVを作ればいいと提唱するのが、2007年に設立したNPO浜松スモーレスト・ビークルシステム・プロジェクト(HSVP)理事長で静岡文化芸術大学准教授の羽田隆志氏だ。

◆PCのフラットフォームビジネスを手本に

原付と自動2輪、路線バスと観光バス、通勤電車と特急電車。身のまわりの乗り物の多くは、近距離用と遠距離用に分かれている。クルマもそうあるべきと考えた氏は、某メーカーのデザイナー出身という経験を生かし、原付規格の自動車(ミニカー)の開発に着手。当初はスクーターのエンジンを積んでいたが、2年前にEVにスイッチすべくHSVPを設立した。

ただしHSVPの目標はEVミニカーの市販ではない。彼らが開発するのはモーターを組み込んでプラットフォームだけとして、その情報を公開し、ボディは外部の会社に作ってもらう。パソコンのOSに似た考え方だ。

こうした手法を選んだのは、個性的なデザインが次々に登場するだけでなく、地域の中小企業を活性化し、技術伝承や人材育成に貢献できるという理由もある。小型車や軽自動車ではなくミニカー規格としたのも、保安基準が厳格ではないので中小企業が参入しやすいためだという。

◆浜松をEV特区に

しかし現状のミニカー規格はバイクの50cc(原付1種)に近く、定格出力は0.6kW以下、乗車定員は1名になっている。これでは実用性があまりに低いことから、125ccの原付2種と同じ1kW、2人乗りのミニカーを一定地域内で認めてもらう「EV特区」を目指している。

HSVPは現在までに数台のEVミニカーを試作している。今回はスポーツタイプの『T3』とクラシックタイプの『ミルイラ』を取材することができた。

◆性能は必要十分

流麗なFRPボディを持つT3は、開発に関わった3人のイニシャルがすべてTだったことが命名の理由だ。3輪としたのは、デフが不要で軽量化できるため。おかげで100kg以下という超軽量を実現した。後輪を駆動するモーターはインホイール式で、バッテリーは足元に積む。試乗はできなかったが、軽量低重心ボディとバイク用操舵系の組み合わせで、キビキビした走りが楽しめそうだ。

一方のミルイラは、遠州地方の方言で「幼いでしょう」という意味の言葉が車名だ。しかし中身はT3以上に高度である。たとえばプラットフォームはHSVPの構想を具現化したもので、パイプで組んだフレーム内にバッテリーやモーターを内蔵し、後車軸を駆動している。

キーをひねり、ウッドパネルのインパネにあるダイヤルで前進をセレクトし、アルミ製アクセルペダルに足を乗せると、ミルイラはフワッと発進した。加速はじゅうぶん。大通りでも楽に流れに乗れる。フレームやサスペンションの剛性感は高く、ステアリングやブレーキの反応も自然だ。最高速度は60km/hで、1時間の走行が可能と、街乗り専用と考えれば性能に問題はない。

◆「やらまいか」の精神で乗り物革命を

しかし前述したように、HSVPで注目すべきはむしろ今後だ。プラットフォームの情報公開と原付2種ミニカーの特区認可が実現すれば、日本のEV環境が一気に変わる可能性もある。

浜松はものづくりの街として知られ、「やらまいか(やってみよう)」というチャレンジ精神にあふれた土地だ。乗り物の世界でもホンダ・スーパーカブやスズキ・ワゴンRなどを生み出してきた。その浜松で、ふたたび乗り物革命が生まれようとしているのである。

《森口将之》

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