エンジン搭載法が変更され、サッシュレスドアを廃するなど全面新設計された車体を持つスバルの新型『レガシィ』。
実際に運転してみると、エンジン搭載方法の変更や新ボディの効能は一発で体感できるほどに大きいことが理解できる。3.6リットル6気筒エンジンを搭載した「アウトバック3.6R」を、東京西部の新販売拠点、CAR DO SUBARU 三鷹から河口湖まで走らせてみた。
中央自動車道に入ってまず驚くのは静粛性の高さだ。エンジン騒音、タイヤノイズとも極めて低レベルで、速度を上げてもパセンジャーとドライバーの会話は非常にクリア。あまりに静かであるため、エンジンルームと客室を分けるファイアウォールと呼ばれる隔壁に、超高級車に装着されている多層構造の防音材か何かを装着しているのではないかと推測したほどだ。
トランスミッション設計部主査の小栗昌己氏は、「その静かさは、エンジンの搭載方法を全面見直しし、ボディを通じてエンジン音が室内に伝わりにくい構造となったことによるものなんです」と語る。そういえば出発前にそのような説明を受けていたんだったと思い出した次第。まさかエンジンの積み方一つでここまで劇的な騒音削減効果があるとは思っておらず、半分聞き流していたのだった。
「従来モデルがエンジン中央部のクランクケース下にエンジンマウントを設けていたのに対して、新型は(エンジンと直結している)トランスミッションのほうにマウントを移したんです。これまでの方式ではエンジンマウントの間隔が狭く、横幅の広い水平対向エンジンが回転方向に揺れるのを防ぐのに苦労してきました。」
「トランスミッションケースにマウントを移してみたら、マウントの間隔を広くすることができ、とても効率よくエンジンを受け止められるようになったんです」(小栗氏)
従来はエンジンの揺れを止めるためにエンジンマウントを硬くする必要があった。新型レガシィは柔らかい大容量のマウントを使っているが、それでもアクセルのオン、オフによるエンジンのブレは非常に少なく、騒音や振動は大幅に削減され、それでいてアクセルレスポンスのダイレクト感は旧型に対して増しているという印象だ。
「トランスミッションにエンジンマウントを設置するのは初めての経験。設計に入る前はどうしようかなどと不安になったりもしましたが、やってみたら思った以上に効果があった。本当に良かったと思います」(小栗氏)
この静粛性やダイレクト感は市街地でも十分に体感できるが、真価を発揮するのは高速や山岳路など速度レンジの高い道路。興味のあるユーザーには長距離試乗をお勧めする。