富士スピードウェイの構内連絡路をぐるっと数km走る試乗コース。走り方を変えながら3度トライし、燃費は20.1km/リットルから29.6km/リットルだった。同じ日に参加した同業者には35km/リットルなんて人もいたから、いやぁ、私、まだまだエコランは苦手です(笑)。
燃費もさることながら、個人的にいちばん気に入ったのは「タッチトレーサー」と呼ぶインターフェイスだ。ステアリング上のスイッチに触れると、それと同じ図がメーターに出現。オーディオやエアコンなどを、指先に視線を落とすことなく操作できる。新型『プリウス』の先進性を象徴する新技術だと言えるだろう。
ホンダ『インサイト』が「新時代のスタンダード」を目指したのに対し、「トヨタの最先端」であり続けるのがプリウス。シフトバイワイヤーの軽いタッチで「D」に入れ、アクセルを踏めばEV走行で音もなく走り始める。それは普通=スタンダードとは違う、プリウスならではの世界だ。新型はタッチトレーサーでそこにまた磨きをかけた。
だから、エクステリアのデザインもインサイトよりトンガっている。モノフォルムの空力プロポーションは似ているが、特徴的なのはボディ四隅のカタチだ。空気抵抗を下げるには、前輪の前にあまり絞り込まない面が必要。フロントコーナーを丸くできず、縦に折れ線を入れるとスタイリングをまとめやすい。ボディ側面の気流をスパッと剥離させるために、リヤコーナーにもエッジを立てたい。空力セオリーに則ったこのカタチを、トヨタは「エアロコーナー」と呼ぶ。
あえて四隅を丸めて「空力やりました感」を抑えたインサイトとは、実はまったく対照的なデザイン。それぞれの開発意図の違いが、デザインに現れているのだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
千葉匠│デザインジャーナリスト
1954年東京生まれ。千葉大学で工業デザインを専攻。商用車メーカーのデザイナー、カーデザイン専門誌の編集部を経て88年からフリーのデザインジャーナリスト。COTY選考委員、Auto Color Award 審査委員長、東海大学非常勤講師、AJAJ理事。