世界初の量産型燃料電池車をうたう『FCXクラリティ』は、未来的になりすぎず、既存の乗用車とデザイン上の共通性を持たせることで、燃料電池車の現実感をアピールしている。その傾向はエクステリアだけでなく、インテリアでも同様だ。
黒とクリーム色の2トーンカラーの内装は、メーターナセル、センターコンソール、クラスタースイッチ、ダッシュボードなどで構成され、普通の乗用車と一見ほとんど変わらない。
「目指したのは単に未来的なクルマだというのではなく、ユーザーの方々が、自分もぜひ所有してみたい、ドライブしてみたいと思うような内装デザインです」
「木目パネルやピアノブラックパネルなど高級感のある素材を多用し、シート地は本田技術研究所で長年研究してきた、手触りに優れたバイオファブリックを採用しました。また、フロントドアとリアドアのトリムを、上方から見てちょうど乗員を包み込むようにラウンドさせるなど、機械の冷たさを感じさせないよう工夫しました」
インテリアデザインを担当した本田技術研究所四輪開発センターの高木陽蔵氏は、デザインの意図をこのように語る。
もっとも、インテリアのすべてが“普通”であるわけではない。「たとえば子供が初めてリニアモーターカーを見た時のような、未来からやってきた技術らしさ」(高木陽蔵氏)を感じさせる演出も盛り込んでいる。
「未来感を出すために徹底的にこだわったのは、何と言ってもメーターのデザインです。メーターはクルマの様々な情報をグラフィカルに表示できるTFTモニター。モーター出力やエネルギー回生、水素残量などの表示方法、さらには運転のエコ度合いに応じて色彩が変わるようプログラムするなど、ビジュアルデザインからカラーまで、これは絶対カッコイイと納得行くまでデザインを煮詰めました」
ドアを開けて運転席に座ると、目前の液晶パネル内には二次電池の充電量、水素残量、システム出力ゲージ、水素燃費計など、多くの車両情報がひと目でわかるよう表示されている。ちなみに通常、14km/リットル、あるいは6.9リットル/100kmといった形で表示される燃費計には「86km/kg」のグラフィックが。水素1kgあたり86km走るというわけだ。このように、普通のクルマらしさを保ちながら、随所に未来感をかもし出す演出がなされているのが、FCXクラリティの特徴と言えるだろう。