【伊東大厚のトラフィック計量学】都市と地方の旅客CO2排出量

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都市圏ごとにCO2を集計してみると

都市と地方では公共交通の利用水準は大きく違う。公共交通の利用機会の多い大都市はCO2排出量も少なくなるはずだ。都市圏と地方圏では、旅客部門のCO2排出量にはどのくらい違いがあるのだろうか。

地域別のCO2の算定は、地域を結ぶという交通の性格から難しい面もあるが、環境自治体会議の推計による市町村別の全国CO2排出量データをもとに、都市圏域ごとの旅客部門CO2排出量を比較してみよう(表1)。

CO2排出量の構成は、三大都市圏が23%、地方都市圏34%、町村部44%であり、約8割が地方部での排出だ。また三大都市圏の1人あたり排出量は700kg程度であり、地方都市圏・町村部(1000kg程度)より3割以上も少ない。公共交通の利用水準の違いが主因だろう(図1)。

◆都市規模と一人あたりCO2

1人あたりのCO2排出量は、都市自体の人口規模より、都市が三大都市圏にあるか地方圏にあるかによる違いのほうが大きい。例えば三大都市圏なら人口10万人以下でも760 kgなのに対し、地方都市圏では政令指定市でも1000kg近くになり、町村部の平均値と変わらない。

これは三大都市圏、特に東京、大阪圏の鉄道通勤圏の広さによるものだろう。三大都市圏の周辺都市(いわゆるベッドタウン)は、人口規模にかかわりなく鉄道利用率が高くなる。各都市が独立した生活圏を持つ地方圏の都市とは性格が異なる。

◆一人あたりCO2の小さな地方都市は?

地方都市の旅客CO2を減らすことはできるだろうか。地方圏の都市は1人あたり排出量の平均が1000kg程度だが、もし排出量が小さな都市があれば、学ぶことがあるかもしれない。人口20万人以上の地方圏57都市のうち、一人あたりCO2排出量が小さな10都市を列挙してみた(表2)。

ベスト3の呉市、奈良市、和歌山市は700kg以下と三大都市圏並みの値だ。しかし、奈良市は京阪神のベッドタウン的性格があり、呉市や和歌山市は地理的に通過する交通が少ないためかもしれず、もう少し分析が必要だ。

旅客CO2排出量の8割が地方部の排出であるにも関わらず、CO2と交通について地域に着目した研究は多くない。地方では中心市街地の活性化をはじめ、土地利用と交通のあり方が今後クローズアップされてくることは間違いない。都市や地域別の視点は、より重要になると思う。

《伊東大厚》

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