トヨタ『1/X』は、劇的な省エネルギー・省資源を達成するためのクルマ作りのあり方を提案する、遠未来型のコンセプトカー。
メインコンセプトは車名に採用されている「X分の1」。現行『プリウス』をベンチマークとして、車両重量を3分の1、エンジンの排気量を3分の1、燃料消費量を2分の1、ロードノイズを2分の1…と、今のクルマのネガティブな要素を一気に半分以下にするという大胆な試みだ。
最大のキーポイントは車両重量をプリウス比で3分の1、すなわち400kg台にすること。ボディが軽量化されれば、パワーユニットも小型ですみ、タイヤも細いもので事足りるため走行抵抗や騒音も減るという発想だ。
「『1/X』の技術提案は、現時点でベストと考えているものであって、将来に向けてさらに技術検討を進めていく」(BR企業価値開発室 谷中壮弘氏)と、あくまで暫定的なものだというトヨタの提案は……。
ボディフレームは有効な軽量化技術として注目されているCFRP(カーボンコンポジット材)製。パワーユニットはFFV(様々な混合比率のバイオエタノール入りガソリンに対応するクルマ、100%バイオエタノールも可)エンジンに2モーター式の次世代THSを組み合わせ、さらに外部電源による充電も可能としたプラグインハイブリッド。エンジン排気量は500ccを想定しているが、軽量化によって現行プリウスと同等の加速性能を達成するという。エンジン搭載位置はリアシート下方だ。
「BRICsなど新興国でクルマの需要が激増していることを考えると、旧来のクルマの価値観、技術を発展拡大させるクルマ作りでは、モータリゼーションは早晩破綻してしまう。劇的な省エネルギー、省資源を果たすため、20年かけてでも『1/X』のコンセプトを継続して追求していきたい」(同 谷中氏)
一見、プリウスを少し小さくしたようなカタチの単なるスケルトンモデルでしかないような1/Xだが、そこに込められたトヨタのイノベーションへの意気込みは相当なものだ。将来技術に関心の高いユーザーはとくに必見だろう。