【池原照雄の単眼複眼】自動車税制の簡素化に着実な前進を

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9税目を3税目に集約するフォーラム案

日本自動車工業会が2008年度の税制改正要望をまとめ、政府が改正大綱を決める年末に向けた取り組みが始まった。要望は従来どおり道路特定財源の一般財源化反対を訴えるとともに、自動車関係諸税の簡素化や軽減など制度改革にも焦点を当てている。税体系の簡素化は、複雑で過重なユーザー負担の是正に向けた突破口になるだけに、着実な前進を図りたいところだ。

9税目に及んでいる自動車関係諸税の簡素化については、昨年末の政府税制改正大綱に、初めて「検討事項」として盛り込まれた。自動車の普及とともに次々に新税を積み上げ、しかも高い暫定税率を重ねるという長年放置されてきた問題に、やっと目を向けさせることができた。

簡素化を柱とする改革については、自工会やJAF(日本自動車連盟)など関係20団体による「自動車税制改革フォーラム」が具体策をとりまとめた。9税目に及ぶ自動車諸税を「取得」「保有」「走行」で各1種類の計3税目に再編するという内容だ。

◆税制の基本を逸脱している複雑な現行体系

「取得」段階では消費税と2重課税になっている自動車取得税の廃止、「保有」段階の自動車重量税については自動車税・軽自動車への吸収を訴えている。さらに「走行」段階では燃料3税(揮発油、軽油引取、石油ガス)と地方道路税を「燃料・走行税」に1本化する。

フォーラムが改革案で強調しているのは「簡素・公平・環境・国際調和」だ。簡素・公平は税制の基本中の基本であり、複雑な自動車諸税は、その精神から著しく逸脱している。このため、自動車や燃料にかかる税金は自動車ユーザーにとって複雑で分かりづらいものとなっている。仮に他の先進国並みの3税目に簡素化されれば、税負担やその使途が明瞭になり、透明性は一気に高まる。

◆ユーザーの認知が世論形成の第一歩

国際調和という点では保有段階の負担水準を、欧米先進国水準に近づけるべきというのがフォーラムの主張だ。営業用車両や軽自動車の保有税(自動車税・軽自動車税)を「国際水準」とし、これらを基準に排気量や重量に応じた税体系とするよう訴えている。

こうした改革は、一気に進むものでなく自工会も「短期」と「中長期」で実現すべき改革目標に分けて戦略を練っている。それでも、例えば取得税については消費税の抜本見直しという引き金がなければ、前に進みそうもない。

いつ総選挙に突入してもおかしくない今の政局で、まともに消費税の見直しを打ち出す政党などない。簡素化に向けた環境づくりは、極めて厳しい情勢にある。

それでも、1035万人に及んだ道路特定財源の一般財源化反対に関する署名運動のように、地道な取り組みは必要だ。ユーザーに現状を知ってもらうところから世論形成は始まる。

《池原照雄》

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