フィアットのセルジオ・マルキオンネ社長は10日、週末で賑わうトリノのショールームに突然姿を現し、来場客を驚かせた。
マルキオンネ社長は1952年イタリア生まれだが、幼いときに両親とともに移民したカナダで育ったため、二重国籍を持つ。2003年、異業種からフィアットに移籍し翌年社長に抜擢された。当時経営危機にあったフィアットの建て直しを図るべく、目標を立てて遂行する経営方式と、積極的に新型車企画と開発期間の短縮を推し進めてきた。
昨2006年は危機脱却宣言を果たし、フィアット、アルファロメオ、ランチア3ブランドを合わせた国内シェアで、悲願の30%回復を達成した。イタリアでは「大フィアットを救った、今最も辣腕の企業経営者」として注目され、現在ヨーロッパ自動車工業会会長も兼任している。
マルキオンネ氏が“出没”したのは、トリノの『ミラフィオーリ・モーターヴィレッジ』。昨年春オープンした直営大型販売店である。
スウェットセーター姿のマルキオンネ氏は、来場客の求めに応じて新型『ブラーボ』のポスターにサインをしたり、一緒に記念写真に収まったりした。また興奮のあまり「BMWから(フィアットグループ車に)乗り換えたい」と声をかけた客に、「それは賢い選択です」と答える場面もあった。
とかく“雲上人”といわれる欧州の自動車産業トップにしては異例ともいえる彼の即席セールスマンぶりは、イタリアのマスコミでこぞって報じられた。
ただし「欧州全域シェア9%達成について、満足か?」との報道陣の問いには、「10%が次の目標です」と、経営者としての意気を露わにした。