レクサス『IS』のチーフエンジニアを務めた福里健さんに、自ら作り上げたクルマの話を聞くのは2回目だった。かつて2年ほど前、英国生産で日本には輸入車扱いで販売されている『アベンシス』の発表会の席上、インタビューしたことを思い出した。
アベンシスは欧州をメインターゲットに見据えているだけあり、ハンドリングや静粛性に関しては当時のトヨタのミドルサイズセダンとは思えぬ性能を達成していた。そのうえ、オーディオに関しても徹底した音作りが行なわれているのが印象的だった。
それは福里さん自らが、アンプやスピーカーを選び、細かなチューニングにまで要求を出していたからこそ、実現できたのだという。そのハナシを聞いたときに、ワタシの中で「福里さんは、かなり繊細な部分にも、こだわりを持つエンジニア」というイメージだった。
そのとき印象もあって、レクサスISを見たときに、すぐに思い出すことができた。ISにはアベンシス以上に福里さんのこだわりが、いたるところに感じられるのだ。
福里さんは「いいコンポーネントであっても、むやみに使えばいいというものではありません。最高の食材でも、調理法を間違えてしまえばいい料理はできませんから。ISに関しては、最高の食材を、最高の調理法で仕上げることができたと思います」
「例えばセンターコンソールの木目パネルは、3つの部品に分かれていますが、すべて1枚の板から切り出して、木目を合わせています。また、トランクにも吸音材を配置して、室内の音をトランクに抜いて、オーディオの音響効果を高めています。静粛性を高めるために、世界初の吸音サンバイザーも採用しました」と語る。
ほかにも継ぎ目の少ないボディパネルや、適度に重さのあるオーディオのボリューム、小物入れのフタの開くスピードなど、細かい部分ではあるのだが、福里さんの質にこだわったクルマ作りが感じられるポイントが随所にある。
高級感を最大の武器に登場したレクサスブランドだけに、福里さんのこだわりはISを作り上げるうえで、じつにいい方向に作用したようだ。(つづく)