新型『ロードスター』(25日発表・発売)のエンジンはアルミブロックを持つ新世代の2.0リットル直4。が、カタログスペックにおける最高出力は170ps(MT)と、現代の水準では取り立てて高性能というわけでもない。
モアパワーを求めるマニアも少なくなさそうだが、実はこの出力は、マツダの考える“人馬一体”感を演出するために設定されたものなのだ。
「出力を上げるだけなら、カムプロフィールを高速側に振ったり、吸排気S-VT(可変バルブタイミング)にすれば簡単なことです。しかし、それではシリンダーヘッドが重くなって重心が上がってしまいますし、価格も上がってしまいます」(パワートレイン開発本部・若狭章則氏)
「何より、『ロードスター』の最大のテーマである“人馬一体”のフィーリングは170psくらいのパワーがもっとも適当なんです。絶対的な速さではなく、エンジンを下から上まで使い切る楽しさを、日常領域でも楽しめるというのが、『ロードスター』伝統のフィーリングなんですよ」(若狭氏)
パワーは必要十分だが、“人馬一体”を演出するために入念なチューニングが施されている。圧縮比は欧州向けエンジンと同じ10.8とし、フライホイールも軽量化。さらに「ドライバーがダイレクト感を得られるよう徹底的にチューニングしました」(若狭氏)という電子制御スロットルバルブなど、多くの部分をリファインすることで、スポーツカーらしい切れ味を実現したという。エンジン性能曲線を見ても、パワーの上がりはきわめて直線的。まさに回転とともに力感を得られるセッティングなのだ。
絶対的な動力性能も不足はない。「北米仕様のMTモデルで0-100km/h加速6.7秒」(若狭氏)という数値は、BMWのオープンモデル『Z4 2.5』の7秒を上回る駿足ぶりだ。