【神尾寿のアンプラグドWeek】モーターショーで見た「個のクルマ」の可能性

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東京に限らず、モーターショーは時代を映す鏡である。一昨年の東京モーターショーで印象的だったのは、安全・環境にまじって、「IT」が大きく扱われていたこと。ITバブル華やかりし頃の虹色の光彩が、クルマのボンネットに映りこんでいる印象だった。

で、今年のモーターショーはどうだったか。一見すると、ITバブルが弾けて、それと一緒にITの要素は吹き飛んでしまったかに見える。少なくとも一昨年の東京モーターショーのように、IT要素がコンセプトカーの主役にはなっていない。今年の主役はハイブリッドや水素と電気であり、どちらかというと「環境」メーンのモーターショーだ。

しかし、じゃあ「IT」がクルマから見放されたかというと、そうではない。確かにITは表側からは見えなくなったけれど、それはITがクルマにとって欠かせない、あたりまえの要素になったからだ。

例えば今回のモーターショーで印象的なのが、「ハンドル形状の変化」が現実的な課題として取り組まれていることだ。これはバイ・ワイヤーというハンドルの挙動を電子情報化するIT技術があって初めて可能なものだ。さらにハンドル形状を変えようという現実的な試みも、

「純粋なデザイン的な面も確かにありますが、今後、テレマティクスをはじめ様々な情報が車内に入ってくると、ドライバー正面のモニター画面を大きくして、それを見やすくしなければなりません。(現在の)円形のハンドルは画面を遮りますので、邪魔なのです」(松本謙悟・トヨタ自動車デザイン本部レクサスデザイン部長)

という、クルマのIT化の要求から生まれている。

もうひとつ、通信ジャーナリストの視点で興味を持ったのが、トヨタの『PM』やスズキの『S-RIDE』などパーソナル性を重視したコンセプトカーが、車車間通信によるメッセージ交換機能を積極的に取り込んでいる事だ。

これらのコンセプトカーは、空間的な個をワイヤレス通信で繋いで仮想的なコミュニケーション空間とするアプローチが、携帯電話に似ていると感じたのだ。もしかしたら自動車も、携帯電話のような「パーソナル性」と「モバイル性」を備えた個の道具になるかもしれない。

今はミニバンなど大人数で乗れる「部屋感覚・家族感覚」のクルマが重視されているが、家庭用電話が携帯電話に取って代わられた経緯を間近で見てきた筆者には、ミニバンの対極にあるパーソナルコミュニケーション性を持った「個のクルマ」にも将来の可能性があると思う。

コンセプトカー以外では、松下電器がETCの発展系であるDSRCの試作機を展示していたり、マイクロソフトが車載OS「Windows Automotive」と同OS搭載カーナビのデモをしていたりと、会場内をくまなく歩くと、将来に繋がるクルマのIT化の展示はいろいろあった。モーターショーもそろそろ終盤。これから来場される方は、クルマのITの世界も覗いてみてほしい。

《神尾寿》

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