見た目ではなく、中身においての話だが、軽自動車の方向性は大きくふたつに分かれていると思う。ひとつはいわゆる「軽自動車」で、もうひとつは「普通車をめざした軽自動車」である。
そこで、ユニークなデザインで独特の雰囲気をもつホンダ『ザッツ』はというと、後者のほう。その違いがどこからくるか、僕的に言うと「走り」である。ひとことで言えば「しっかり感」。
前者はあくまで手軽な移動のための道具なだけに、例えば高速道路などに乗ると心許ない感じを受ける。だが後者は重厚な感覚が漂い、結果ドライバーは「確かな」感じを得ることができるのだ。この点でザッツは、ほかの軽自動車と大きく異なる。
確かな感覚の理由は、サスペンションやブレーキ、またはそれらを含めたシャシーが普通車と変わらぬレベルでしっかり構築されているからだ。さらに試乗したのはターボエンジン搭載車だったが、パワーとトルクも充分だった。もちろん前者がしっかりしていないとは言わないが、「必要最低限」と「充分以上」とのあいだには、感覚だけではない差があって当然だろう。
ザッツのエクステリアは、家電のようにクルマ離れしており、軽自動車の中でもっとも現代的。それだけに、見た目に溺れて機能は必要最低限となってもおかしくなかったが、実際には頼もしい走りを展開する。恥ずかしながら、軽自動車であることを忘れてしまったほどであった。
《河口まなぶ》