8日付けロイターは、ボルボ関係筋の話として、現在同社が所有している三菱自動車株(全株式の3%)をダイムラー・クライスラーに売却するつもりであると報じた。これが今回の三菱−ボルボ提携破談報道の口火を切ったようだ。ウォールストリートジャーナルもボルボ筋として同様に報じている。
三菱はトラック・バス部門をボルボからの出資を受けて分社化する方針だ。両者で一昨年に合意に至っているが正式な提携はまだ結ばれておらず、準備中である。いっぽう乗用車部門はダイムラー・クライスラーからの出資をすでに受けている。ボルボとダイムラー・クライスラーとの間で、三菱が抱える赤字をどう処理するか合意にいたらなかったため、ボルボは三菱との提携を御破算にする、とロイターは伝える。
ここでいうボルボはトラック・産業車両メーカーだ。同社・旧乗用車部門は現在はフォードが出資する別会社になっている。ヨーロッパのトラック・バス市場においてダイムラー・クライスラーとはライバル関係にあり、三菱−ボルボ提携がダイムラー・クライスラーの影響を受けない保証を、三菱側に求めたと伝えられる。リコール騒ぎ以来、三菱の経営は悪化し、ダイムラー・クライスラーによる三菱支配が強まったことも、三菱−ボルボ提携破談の観測が強まった理由だ。三菱としてはライバルの均衡の間で自社の存続を図るつもりだった。
またボルボはルノー系の商用車メーカー、ルノーVIと資本提携を結んでいる。ルノー-日産つながりで、ボルボは日産ディーゼルとの提携を検討しているとも伝えられる。
いっぽうAPは、今回の報道を受けて、フランクフルト証券市場でダイムラー・クライスラー株が下がったことを伝えている。ボルボが所有する三菱株を買い取ることは三菱に対する支配を強めることになるが、負債も増えるとの見方だ。ダイムラー・クライスラーはクライスラー部門の不振にも悩んでいる。
なおボルボ、ダイムラー・クライスラーともこの件に関してコメントを避けている。三菱自動車は「ボルボとの提携の話は進行中で、白紙になったというようなことはない」(広報)とauto-ASCIIに対しコメントしている。もともと今年中に提携を結ぶ予定で、一時、前倒しでの提携締結を意図したこともあったが、遅れているわけでもない、という。