【トヨタ プリウス 新型発表】次世代のプリウスを模索する

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“ネクスト・プリウス”。すなわちトヨタの次世代ハイブリッドカーは、どのようなモノになっていくのか。

トヨタは今年、レクサスブランドとトヨタブランドから、『プリウス』より上のクラスのハイブリッド専用車を発売するのをはじめ、年に数車種ずつハイブリッドカーを増やしていく。それらは現在のハイブリッドカーと大きな違いはない。価格がプリウスのように普通のクルマと同程度であれば、それらもユーザーから歓迎されるだろう。

「トヨタのハイブリッドカーの最先端という位置づけのモデル」(大塚明彦チーフエンジニア)というプリウス。環境性能のトップランナーという先進イメージで作り上げてきたプリウスブランドを守るには、常に革新技術を投入する必要があるのだ。では、その革新技術とはどのようなものなのか。

製品企画主幹の北村嘉朗氏は、「パワートレインの性能面では、現時点で相当にいいところまで来たと思う。これからさらに上を目指すためには、軽量化をはじめ、車体のほうを抜本的に見直していく必要がある」と語る。

トヨタは07年の東京モーターショーに『1/X』というコンセプトカーを出品した。排気量500ccの小型エンジンと2個のモーターを使い、バッテリーに外部電源から充電することが可能なプラグインハイブリッド。カーボン素材の超軽量ボディと小さいパワートレインで、動力性能を維持しながら燃費を大幅に上げるという考え方だ。

もちろん大衆車をフルカーボンコンポジットで作るのは非現実的だが、次のプリウスではパワートレインの改良、重量増加の防止といった既存の量産車作りのロードマップから本格的な次世代技術にシフトすることを目指しはじめる可能性は大きい。

プリウスに使用されているストロングハイブリッドシステム「THS II」は、現時点ですでにハイブリッド機構としては極めて高いパフォーマンスを示している。が、トヨタの研究開発のテンポが非常に速いため、量産車誕生から12年目の今、システム自体の効率工場は早くも天井に近づきつつある。

ハイブリッドシステムの制御開発担当は、「たとえば減速時の回生も、ハイスピードからの急ブレーキでもない限り、バッテリーに蓄えきれずに捨てる電気はもうほとんどない状態」だという。

その一方で、2モーター式のストロングハイブリッドのライバルが今後世界で増え、トヨタは追いかけられる立場になる公算が大きいという事情もある。

トヨタのエンジニアは、「そう遠くない将来、トヨタのスプリットハイブリッドに関する重要特許が切れはじめるという現実がある。そのときには、多くのメーカーが2モーター式ハイブリッドを次々に出してくることになると思います」と語る。

もちろん、2モーターを他社が作り始めたからといって、そう簡単にトヨタの優位性は崩れない。これまで、GM-ダイムラー連合など一部がストロングハイブリッドのモデルを市販しているが、今年はプリウスだけで年産50万台に達しようかというトヨタは、性能、コストの両面で圧倒的に差をつけている。

これから本格的に量産化の研究を行う他のメーカーとは、F1で言えは周回遅れにするほどの差をつけているに等しい。後発メーカーはトヨタのように試行錯誤を繰り返さずにすむため、キャッチアップが不可能というわけではないが、やはりトヨタの壁は厚い。

トヨタとしては、ハイブリッドシステムで大きな技術、コスト格差をつけているうちに、次世代技術である高性能バッテリー、軽量化のための新素材、また電気モーターの急所と言われるネオジム、ジスプロシウムといった希土類の使用量削減や代替物質開発といった、次のフェーズの研究開発に軸足を移していき、脱石油技術で追いかけてくる他メーカーに対するアドバンテージを堅持したいところ。

前出のエンジニアは、「これらの研究開発はとても難しいもので、すぐに成果が出せるかどうかは未知数です。しかし、次のプリウスでは、その一部でも何とか盛り込むことができるようにしたい」という。

3代目プリウスが一大ブームを築くなか、10年代半ば頃出ると思われる次世代プリウスでトヨタがどのような技術競争を仕掛けてくるのか、自動車業界関係者の視線を早くも集めている。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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