【神尾寿のアンプラグド 特別編】GWは大丈夫!? 「高速道路1000円」でカーナビの渋滞予測はどうなる?

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会社によっては「16連休」にもなるという、今年のゴールデンウィーク。大型連休に渋滞はつきものであるが、今年はそれに追い打ちをかけるのが、今年3月28日からスタートした高速道路の大幅割引制度だ。

周知のとおり、同制度は景気振興策のひとつとして実施され、休日には首都高など都市高速道路を除く高速道路が“定額1000円”になる。2008年は原油高の影響で公共交通に押され気味だった国内のクルマ旅行が、“コストの安さ”からがぜん魅力的になったのだ。特に家族連れやグループなど、複数人での休日移動コストはクルマが圧倒的に安くなるだろう。

その一方で、今年のGW期間中の渋滞は「過去最悪になる可能性が高い」(高速道路会社幹部)という。高速道路3社と日本道路交通情報センターがまとめたGW期間中の渋滞予測によると、30km以上の渋滞が発生する回数は前年から倍増して56回になる見込み。10km以上の渋滞はGW全体で前年比1.7倍の372回発生するという。

◆カーナビの渋滞予測は「役立たず」に!?

渋滞が頻発するとなると、ドライバーの期待が高まるのがカーナビゲーションの「渋滞予測」機能だ。これは過去のVICS渋滞情報の蓄積データから未来の渋滞を予測し、回避するというもので、2005年頃からトレンドになった。現在ではハイエンドモデルを中心に多くのメーカーが、渋滞予測機能を搭載している。

今年のGWの大渋滞で、これらカーナビの渋滞予測・回避機能が救世主になるのだろうか。

結論から言えば、多くのカーナビがドライバーの期待に応えられそうにない。なぜなら、カーナビが渋滞予測の根拠としている「過去の渋滞パターン」のデータが、今回の“高速道路 定額1000円化の影響”を織り込んでいないからだ。あるカーナビメーカーの幹部は匿名を条件に話す。

「特に誤差がひどくなりそうなのが、(ハードディスク内にのみ過去の渋滞データを持つ)スタンドアローン型のカーナビです。これらは高速道路の大幅割引開始以前のデータしか持たず、予測アルゴリズムのアップデートもできませんから、今回の休日1000円化の影響を予測できない」(カーナビメーカー幹部)

誤解を恐れずに言えば、今回の大幅割引の影響で、HDDに蓄積されている渋滞予測用の過去データがまったくの役立たずになってしまったのだ。

◆「通信型カーナビ」にとっては追い風

一方で、今回の休日特別割引の実施で、フットワークのよさを見せつけたのが、サーバーと連携する「通信型カーナビ」だ。例えば、本田技研工業の「インターナビ」は、高速道路の休日特別割引開始と同時に新料金に対応。「ETC割引ルート」に休日特別割引を含む新料金プランのデータを反映させたほか、インターナビユーザー向けの会員向けWebサービスでも新料金に対応したドライブプランの作成が可能になっている。

さらにホンダは、休日特別割引の実施を受けて、インターナビの渋滞予測アルゴリズムの調整も行っているという。

「まず最初のステップとして、過去の渋滞情報との差が大きそうな休日や特定の時間帯は、統計蓄積データではなく、(インターナビVICSを用いた)リアルタイムデータを優先的に使うようにアルゴリズムを変更しています。ここではインターナビユーザーの増加だけでなく、パイオニアのスマートループとの相互接続により、リアルタイム情報の収集量が増えていることが有利に働いていますね」(本田技研工業 インターナビ事業室長の今井 武氏)

周知のとおり、インターナビのフローティングカーシステムでは、既存のVICSよりも広範囲かつ高精度の渋滞情報が収集できる。このリアルタイムデータを積極的に活用することで、休日特別割引実施前に収集したデータの影響を小さく抑える。

その上で、過去の統計蓄積データも今回の状況変化に適応するように使うという。

「ホンダでは他社よりも早い時期から、独自に渋滞情報の蓄積と統計化、データ解析を行ってきました。そのため今回のように、特殊な外的要因から大規模な渋滞が起こるという、発生シナリオのパターンデータも豊富に所有しています。ですから、過去データを用いた渋滞予測の部分でも、そうした(現在の状況に近い)パターンデータを使う形にアルゴリズムを調整しています」(今井氏)

今井氏によると、この休日特別割引の影響を織り込んだ渋滞予測サービスは、すべてのインターナビで利用できるほか、会員向けのWebサイトでも提供されるという。インターナビユーザーは幸運なことに、GW開始前に精度の高い渋滞予測データを用いてドライブプランが作れそうだ。

インターナビは顕著な例であるが、今回のように渋滞発生パターンが大きく変わるような環境変化に対して、通信型カーナビが強いのは確かなところだ。特に今回はかなり急激な変化になるため、通信型のオンデマンドVICSやプローブカーシステムに対応しているだけで、渋滞の把握や予測に効果がある。トヨタや日産、パイオニアなど、テレマティクス対応カーナビにとっては追い風になりそうだ。

◆既存ナビのユーザーは“携帯ナビ”併用がお奨め

これら通信型の渋滞情報・予測サービスに対応していないカーナビのユーザーは、GW前にどうすればいいのだろうか。

将来も考えて理想的なのは通信型ナビに買い換えることだが、大型連休前の出費は避けたい人が大半だろう。そのようなドライバーは、通信・サーバー連携が前提になる「携帯ナビ」の併用をお奨めする。

ナビタイムジャパンの「NAVITIME」や、ユビークリンクの「全力案内!」などは、通信型の特性を活かしてオンデマンドVICSを搭載している。全力案内!では主要な都市でのプローブカーシステムも用意されている。

先述のとおり、今回の休日特別割引ではリアルタイムデータの方が信頼性が高くなるため、オンデマンドVICSでルート全域の渋滞情報がキャッチできるだけでも役立つ。特に既存のカーナビがFM VICSにしか対応してない場合は、渋滞予測は無理でも、携帯ナビで先々の渋滞状況まで逐一確認しておいた方が当日の行動がしやすいはずだ。

また、NAVITIMEでは4月15日から、休日特別割引を含むETC大幅割引の新料金に対応。出発時点でのお得な割引ルートの計算のほか、出発日時を変えた場合に料金がどう変わるのかもシミュレートできるようになった。この新料金プランによるシミュレーション機能は、旅行前や旅行先でのドライブプラン作成に便利だろう。

ドライバーにとって、渋滞は何よりも嫌なもの。直近のGWに限らず、通信型カーナビや携帯ナビの「オンデマンドVICS」や「フローティング/プローブカーシステム」、「サーバー型 渋滞予測」といったサービスの重要性は、今後さらに増していきそうだ。

《神尾寿》

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