タクシープローブで勝負をかける。全力案内の戦略…ユビークリンク社長インタビュー 前編

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タクシープローブで勝負をかける。全力案内の戦略…ユビークリンク社長インタビュー 前編
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GPS携帯電話の普及と性能向上により、急速に市場規模を拡大する携帯ナビ。この分野では、草分けであるナビタイム・ジャパンを筆頭に、インクリメントPやゼンリンデータコムなど多くの企業が熾烈なサービス競争を繰り広げている。

この携帯ナビ市場に昨年10月に参入したのが、野村総合研究所の100%子会社であるユビークリンクだ。同社は携帯ナビ「全力案内!」を立ち上げ、この新興市場に打って出た。

携帯ナビサービスの最後発として、全力案内!はどのように勢力拡大を図るのか。ユビークリンク代表取締役社長である増田有孝氏に話を聞いた。

◆プローブのビジネス化をフットワークよく行う

野村総合研究所といえば、企業向けの情報システム構築や経営コンサルタントがコア事業である。その野村総研がいきなり「携帯ナビ」というBtoC事業に乗り出すことを不思議に感じる人もいるだろう。しかし、携帯ナビはデジタル地図をベースに、様々なコンテンツやリアルタイム情報を的確にユーザーに届けるのが競争ポイントになる。この点で、「システム構築に強いという、野村総研の優位性が生かせる分野」だと増田氏は話す。

「私自身、学生時代にBtoCのベンチャー企業を手がけていました。その後、野村総研に入ってからはシステムエンジニアや経営コンサルタントを行いましたが、(BtoC市場における)携帯ナビ市場の大きさが社内的にも認知されまして、新事業としてユビークリンクを任されることになりました」(増田氏)

携帯ナビ市場は、携帯電話へのGPS標準搭載化と、第3世代携帯電話(3G)によるデータ通信分野の定額制・高速化の流れを受けて、目下急拡大中の分野だ。また、従来のカーナビゲーションと異なり、“サーバー連携”と“リアルタイム情報”を使うことで、サービス的かつビジネス的な発展可能性も大きい。ユビークリンクは、その中でも特に「プローブ情報の活用に着目した」(増田氏)という。

「プローブ情報の活用については、2006年頃から非常に将来性のある分野として野村総研時代から注目していました。しかし、ITSに関わる方々が、なかなかビジネス化できていなかった。そこで我々として何かできないかと考えまして、事業化に踏み出したのです」(増田氏)

プローブをビジネス化する。ここでカーナビゲーションとテレマティクスではなく、新興市場の“携帯ナビ”を使ったのがユビークリンクの基礎になっている。ケータイ向けのナビサービスであれば、エンドユーザーに利用料金を払ってもらえることは、この分野の草分けであるナビタイムが実証していた。そこで増田氏はNTTドコモに企画提案をし、公式コンテンツとして認められる内諾が取れたことで、野村総研の子会社として事業化を図った。

「なぜ、野村総研から(ユビークリンクに)会社を分けたかと言いますと、野村総研はBtoB事業が中心ですから、ビジネスサイクルがBtoC事業とどうしても異なります。携帯ナビ市場のように技術革新やサービス競争のペースが速い分野においては、『器(会社)を分けた方がよい』という判断をしました」(増田氏)

◆2008年末までに1万3000台のタクシープローブを構築

ユビークリンクのビジネスモデルは、携帯ナビの「全力案内!」を軸に展開しており、その延長線上に収集したプローブ情報の販売や、携帯ナビをメディアとするエリアマーケティングなどで構築されている。現在は、全力案内!の利用者を拡大している段階だ。サービス開始後2ヶ月で、ユーザー数はドコモ向けだけで約15万人、このうち約4万5千人が月額210円の有料会員だという。

「トータルナビというコア部分は、NAVITIMEなど競合他社と似ています。ケータイ向けサービスなので、基本部分で平準化が起こるのはしかたがない。その上で、我々が(優位性として)尖らせる部分はどこかといいますと、プローブなど『リアルタイム情報』の部分です」(増田氏)

全力案内!のアドバンテージとなるプローブ情報の構築は、6000台のタクシーが集める「タクシープローブ」と、全力案内!ユーザーからの情報を使っている。むろん、情報量でみればタクシープローブが圧倒的な量になる。

「プローブ情報は4月25日にリアルタイム化を行い、対応タクシーも今後さらに増やしていきます。現時点では首都圏など都市部中心ですが、今後は展開エリアも広げていきたい。

(プローブ情報を集める)対象タクシーについては、今年末までに1万3000台まで増やす予定です」(増田氏)

ユビークリンクのタクシープローブシステムは、タクシー会社の配車管理システムから情報を収集する仕組みになっており、現在は日本交通や第一交通産業グループの一部などから情報収集を行っている。今夏には東京無線グループなど大手タクシー会社への展開も順次進めていくという。

「各タクシー会社から収集したプローブ情報は、我々が独自の情報処理をしてリアルタイム渋滞情報や渋滞予測システムに加工します。この部分は膨大な情報処理を行うシステム開発を長年てがけた野村総研のバックグラウンドが生かされている部分ですね」(増田氏)

なお、ユビークリンクでは、独自で収集・加工処理したプローブ渋滞情報を、全力案内!の競争優位性として使うとともに、将来的なビジネスとして外販もしていく考えだ。

《神尾寿》

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