【池原照雄の単眼複眼】CVCCが再来…ホンダのディーゼル触媒

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排ガスで排ガスを浄化

ホンダが、当面予定されている排ガス規制では、世界で最も厳しいレベルに適合できるディーゼルエンジン用のNOx(窒素酸化物)触媒を開発した。2009年にはこの触媒によるエンジンを搭載した乗用車を、規制が施行される米国に投入する。1972年にCVCCエンジンを発表した時ほどの反響はないものの、クリーン化技術としてはCVCCに匹敵する価値ある発明と評価している。

この触媒は2層構造になっており、排ガス中のNOxと水素を反応させてアンモニアを生成、そのアンモニアをさらにNOxと反応させて無害の窒素に浄化するというプロセスをこなす。アンモニアを使った反応は、すでに大型トラック用に実用化されている「尿素SCR」システムと基本的に同じ。

◆福井社長も「思いつかない」独創性

だが、SCRのように尿素水は必要なく、長さ50cmほどの小さな筒でディーゼルの天敵であるNOx削減の仕事をやってのける。ディーゼル排ガスからアンモニアを生成するのが、この技術の最大のポイントだ。

ディーゼルは「リーンバーン(希薄燃焼)」のため、排ガス中には酸素が残りやすい。学生時代に化学を専攻した福井威夫社長に聞くと「酸素雰囲気のなかでアンモニアはできないというのが基礎理論」。窒素と水素から成るアンモニアの生成を酸素が邪魔するからだ。

開発した触媒ではエンジンの燃焼を、一時的に燃料の濃いリッチバーンにすることで排ガス中の酸素を減少させ、アンモニアを生成するようにした。福井社長は「僕も思いつかない技」と、開発陣には兜を脱ぐ。

◆CVCCよりも環境への貢献度は高い?

この触媒を使った試作エンジンは、ホンダの社内測定で、2007年に施行予定の米国規制「Tier II Bin5」が求めるNOxの排出レベル(1マイル当たり0.07グラム)をクリアした。Bin5は、ガソリンもディーゼルも同じ規制なので、ガソリン車並みのクリーン度を達成できたことになる。

ホンダは70年代にCVCCエンジンで、やはり当時としては世界で最も厳しかった米マスキー法による規制を一番乗りでクリアした。開発に投じた経営資源は、今回の触媒よりCVCCの方がはるかに大きく、技術的な困難さを示す。

だが、独創性という点ではいい勝負だと思う。さらに環境負荷軽減への貢献度では、その後の規制強化や触媒技術の向上によって、意外と早く役目を終えたCVCCよりも、NOx触媒の可能性に期待がもてる。30年余りを経てホンダにとってはCVCC級の環境技術が再来したのである。

《池原照雄》

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