フィアット創業家の血を引くクリストフ・ホーヘンローエ・フルステンベルク氏(50歳)が、タイの獄中で死亡していたことが9日明らかになった。クリストフ氏はダイエット治療を受けるために、バンコクに滞在していた。
クリストフ氏は、故ジョバンニ・アニエッリ元フィアット名誉会長の甥の子。叔父はファッション・デザイナーのエゴン・フルステンベルク。
拘束の原因は、ビザの日付を自らボールペンで書き直していたため。次の渡航先であるハワイに向かうため赴いた空港で発覚し、当局に逮捕された。ビザ改変の理由は、航空機が満席だったためとされている。
獄中のクリストフ氏は、5日土曜から6日日曜にかけて容態が急変、まもなく死亡した。死因については、常用していたインシュリンの投与が許されなかった、心臓発作、呼吸器系の感染症、とさまざまな憶測が交わされている。
いっぽう、彼の母親で元女優のイラ氏をはじめとする家族は、タイ当局による過酷な虐待・拷問があったのではないかとの疑いを強めている。また、当局の要求どおり数回にわたって保釈金を払ったにもかかわらず、応じてもらえなかったともいう。タイ側の検死が終わり、遺体が戻されるまで、家族の苛立ちは収まりそうにない。
アニエッリ家は、後継者と目されていたジョバンニ・アルベルトが1998年に極めて稀な悪性腫瘍で33歳で急死したのをはじめ、悲劇的ともいえる死が相次いでいる。今回の事件で、ふたたび「イタリアのケネディ家」の文字が週刊誌の見出しに踊る日が続きそうだ。