人間搭乗型二足歩行ロボット…屋外を歩行することの難しさ

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人間搭乗型二足歩行ロボット…屋外を歩行することの難しさ
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「キュルルッ」という小さなモーター音とともに脚が10cmほど伸びる。着座した乗員がジョイスティックを少し倒すと、実にゆっくりとしたスピードではあるが、転倒することも不安定になることもなく、しっかりとした足取りで前に進みはじめる。

……ヒューマノイドロボットの草分けである早稲田大学ヒューマノイド研究所とロボットメーカーのテムザックが共同開発した、赤い軽合金製の脚が特徴的な人間搭乗型二足歩行ロボット「WL-16R III」が、世界で初めて、人間を乗せて屋外を歩行することに成功した(4月26日)。

「何だ、単に外を歩いただけではないか」と思う向きも少なくないだろう。実際、今回の実験ロボットの原型となった「WL-16」が人間を乗せての二足歩行を果たしたのは、今から2年以上も前の2003年11月。2005年4月には、バージョンアップ型の「WL-16R II」が、何と人を乗せて階段を昇降することにも成功している。それに比べると、歩く場所が屋外になったという今回の実験は、インパクトが薄いように見える。

実は、二足歩行ロボットにとって、屋外を歩くということはものすごく大変なことなのだ。もう少し正確に言うと、データのないランダムな不整路面を二足歩行することが非常に困難なのだ。その不整路面における二足歩行を、人間を乗せた状態で実現させたという部分が、「WR-16R III」のハイライトなのである。

不整路面における二足歩行を実現させた要素技術は、人間の足で言えば足の裏の部分にあたる場所に設置したセンサーと、そのセンサーから得られたデータに基づいてロボットを不整路面でも転倒させないようにする、非線形コンプライアンス制御を用いた「着地軌道修正制御」、「推定姿勢補償制御」の両制御プログラムだ。

わかりやすく言うと、これまでのロボットに「おっと、転びそうになっちゃった」と知覚する能力を追加したということだ。これは世界トップレベルと言われる日本のロボット工学のなかでも、かなり画期的なシステムである。

これらの技術によって、体重55kgの人間を乗せた状態での屋外歩行を実現させた。また、ロボット単体では公道に点在する点字ブロックの敷設された路面や、傾斜角約3度の砂利道、横断歩道において安定した歩行を実現させることに成功したという。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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