11月1日の改正道交法施行とともに開始される携帯電話の取り締まりでは、違反行為の現認を警察官が行う位置を車道よりも高い歩道橋や陸橋上に設定している。クルマを高い位置から見下ろすことで、ドライバーの手の動きや、携帯電話を持っている様子などを外形的かつ直接的に判断することを狙いとしている。
警察官は違反行為を行うドライバーを直視し、「違反行為を行っている」と2名以上で確認された場合には、前方の取り締まりポイントへ「品川500 1234の白色カローラ、(携帯)使用確認のため抑止」などと無線連絡を行う。
現認が行われる歩道橋の位置と停止命令の位置が近ければ問題はない。ドライバーは携帯電話を保持したままの場合も多いだろうし、停止命令を出した警察官も目撃していれば「使っていない」という言い逃れも難しいだろう。
しかし、大都市などでは現認を行う歩道橋や陸橋と、クルマを安全に停止させられるような余地のある場所が100mほど離れていることも珍しくはない。一部ではビデオカメラも併用して「外形的に判断できる具体的な映像記録を残す」と考えているところもあるようだが、両ポイントを走行している間に通話やメール送受信を終了したドライバーが「携帯電話を使っていない。そんなの見ていればわかるだろう」と反論した場合にはどうなるのか。
実はこうした事態を想定した“問答集”というのが施行以前から用意され、各警察署単位でのシミュレーションも実施されているようだ。問答集の詳細については部外秘の扱いとなっているようだが、漏れ伝わる話によると以下のようなやり取りが想定されている。
まず、ドライバーが「使っていない」と反論した場合には、通話記録やメールの送受信記録を任意で閲覧させてくれるように求めるという。任意とはいえ、「使っていない」と言っている以上、ドライバー自身が自らに掛かった嫌疑を晴らす必要もあり、閲覧を断るのは事実上不可能と考えた方がいいだろう。プライバシーを理由に閲覧を断固拒否する人がいるだろうというのも織り込み済みのようだ。
現認されていたことに気づき、ドライバーが携帯電話の着/発信の履歴を消してしまっていた場合にはどうなるのか。この場合は証拠隠滅の嫌疑も掛けられるとともに、「携帯電話のメモリーをいつ消去したのか」ということが問題になる。履歴を消去するためには携帯電話を手に持って操作しなくてはならないが、走行中に携帯電話を手に持つこと自体が違反とみなされている以上、現場の警察官はこの点を追及してくることは間違いない。
他にもいろいろなパターンが想定されるが、記者が思いついた言い訳をいくつか挙げ、実際の取り締まりに当たる現場の警察官にぶつけみたところ、すべて論破されてしまった。そこから受けた印象は「よく研究しているな」というもの。
各都道府県警察ごとにレベルは異なるだろうが、そのいずれも事前にかなりの時間を割いて、取り締まりについての勉強を重ねていると思った方がよいだろう。