暴力による自殺強要は殺人未遂---最高裁が判断

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生命保険金を受け取ることを目的に、偽装結婚した女性を執拗に脅し、事故死にしか思えない状況で死ぬように迫ったことが殺人未遂罪に当たるかどうかという判断で、最高裁第3小法廷が「殺人未遂罪に当たる」と20日付けで判断していたことが、22日に明らかにされた。

この事件は2000年1月に発生している。偽装結婚した当時27歳の女性に掛けた生命保険金約6億円を受け取る目的で、当時30歳の男がこの女性に対して「事故にしか思えないような状況で死ね」と命じ、実際にクルマを使って猛スピードで岸壁まで走らせ、海に飛び込ませていたというもの。

女性はクルマが海に沈む直前に自力で脱出。近くの民家に「殺される」と助けを求めたことで事件が発覚した。

男は事件後に虚偽の婚姻届を提出したとして、公正証書原本不実記載・同行使容疑で逮捕されたが、この際の取り調べで「思いつめた女性が勝手に飛び込んだ」と関与を否定していた。

これに対して被害者の女性は「執拗な暴力を受け、精神的に追い込まれていた。殴られて殺されるか、飛び込んで死ぬかの二者択一しか出来ない状況だった」と供述。極めて異常な精神状態に追い詰められていたことがわかった。

検察はこれを受け、男を殺人未遂容疑でも起訴しているが、弁護側は「女性が海に飛び込んだときには一緒におらず、飛び込みはあくまでも女性の自発的行為によるものだった」と反論した。

しかし、裁判所は「執拗な暴行を回避するためには、命令に応じて飛び込む以外の行為は選択できない精神状態に陥っていた」と認定。男がとった一連の暴力行為が殺人未遂に当たると判断してきた。一審、二審とも同判断だったが、男はこれに不服を申し立て、最高裁に上告していた。

最高裁第3小法廷の浜田邦夫裁判長は「命令を拒否できない精神状態まで女性を追い込み、自らを死亡させる危険性の高い行為を命じ、それを実行させたのは殺人の実行行為に値する」と最終的に判断。20日付けで男の上告を棄却した。これによって脅迫行為による自殺強要が殺人未遂に当たるということになった。

今回の棄却決定で、二審で命じられた懲役6年の刑が確定する。

《石田真一》

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