圧倒的優位な立場に過剰防衛は成立せず---交通トラブル殺人で実刑判決

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昨年5月、広島県廿日市市の市道で、クルマ同士のすれ違いを巡ってトラブルとなり、傘を相手の顔面に突き刺し、出血多量などで死亡させたとして傷害致死罪に問われている34歳の男に対する判決公判が広島地裁で24日に行われた。裁判所は男に対して懲役4年6カ月の実刑判決を言い渡している。

この事件は昨年5月16日に起きた。廿日市市上平良の路上で近くに住む55歳の男性と、現場を通りかかった男が、クルマのすれ違いを巡って口論となった。被告のクルマは路上駐車していた被害者のクルマが原因で通行できず、被害者に対してこれをどかすように命令。被害者がこれを拒否したため、互いの争いに発展した。被害者は傘を取り出して威嚇したが、被告に奪い取られて顔面など数カ所を刺され、これを原因として死亡している。

公判で被告側は最初に傘を持ち出したのは加害者であると改めて主張。被告の行為は自分の身を守ろうとしたために生じてしまった過剰防衛であり、傷害致死には当たらないとしてきた。

24日の判決公判で広島地裁の小西秀宣裁判長は「被告が挑発的な言動を行い、体力的にも勝っており、常に被害者を制圧していた」と指摘。過剰防衛だとする被告の主張は「自己を防衛しなければならないという切迫した事情は見当たらない。被害者から傘を取り上げた段階で攻撃を受ける危険性は無くなっている」と、これを退けた。

そして「奪った傘を使い、積極的に攻撃するという行為は危険で悪質。些細な出来事を発端とした点でも悪質といえるが、被害者の死は偶発的で被告にも予想外だった」と結論づけ、懲役7年の求刑に対し、懲役4年6カ月の実刑判決を言い渡した。

《石田真一》

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