大きすぎるリスク…横浜市の新交通システム、横浜シーサイドラインが「参画せず」

横浜シーサイドラインが運営する金沢シーサイドラインの列車。同社は神奈川県内で新交通システムの知見を有する唯一の事業者として、上瀬谷ラインへの参画を要請されていた。
  • 横浜シーサイドラインが運営する金沢シーサイドラインの列車。同社は神奈川県内で新交通システムの知見を有する唯一の事業者として、上瀬谷ラインへの参画を要請されていた。
  • 上瀬谷ラインの計画路線図(中央破線部分)。仮称・瀬谷駅と仮称・上瀬谷駅が設置され、仮称・上瀬谷車両基地が終点部となる。延長約2.6kmのうち7割は地下線となる。
  • 2015年6月までに在日米軍から全域が返還された「旧上瀬谷通信施設」の位置。横浜市西部の瀬谷区と旭区に跨り、面積は約242haを誇る。返還を受けて、地権者らのとりまとめを経た「旧上瀬谷通信施設土地利用計画」が2020年3月に策定された。

横浜市の新杉田駅(磯子区)と金沢八景駅(金沢区)を結ぶ金沢シーサイドラインを運営する横浜シーサイドラインは11月26日、横浜市から参画要請があった「都市高速鉄道上瀬谷ライン(仮称)」(上瀬谷ライン)について、「現時点で参画はしない」と正式に表明。11月25日付けで横浜市に回答した。

上瀬谷ラインは、旧上瀬谷通信施設と呼ばれる在日米軍施設跡地内に構想されている大型テーマパークへの交通手段として計画されている、Light Rail Transit(LRT)、新交通システム、モノレールなどを含む中量軌道で、相模鉄道本線瀬谷駅最寄りの仮称・瀬谷駅を起点とし、仮称・上瀬谷駅を経て、仮称・上瀬谷車両基地へ至る延長約2.6kmの路線。

横浜市では跡地で国際園芸博覧会が開幕する2027年3月を開業目標としており、軌道法に基づく特許申請へ向けて、「(横浜シーサイドラインが)本市が所管する公営又は第三セクターで、唯一、軌道事業:新交通システム(AGT)の専門的な知見、運行、経営ノウハウを有する」ことを理由に参画を要請していた。

これに対して横浜シーサイドライン側は参画しない理由として、テーマパークの事業主体や具体的な事業内容が明確でない点、提示された来園者数の予測値や交通分担率が大きく変動する可能性がある点、テーマパークに依存した路線になることが明らかであるにも拘わらず、その共同体からの出資の有無が明確になっていない点、需要予測などが横浜シーサイドライン側の認識と大きく乖離しており単独の事業としては採算性や継続性が見込めない点、リスク対応がないまま参画すると金沢シーサイドラインの運営にも影響を及ぼす点などを挙げており、リスクに対する両者の認識の違いが浮き彫りになっている。

上瀬谷ラインの計画路線図(中央破線部分)。仮称・瀬谷駅と仮称・上瀬谷駅が設置され、仮称・上瀬谷車両基地が終点部となる。延長約2.6kmのうち7割は地下線となる。上瀬谷ラインの計画路線図(中央破線部分)。仮称・瀬谷駅と仮称・上瀬谷駅が設置され、仮称・上瀬谷車両基地が終点部となる。延長約2.6kmのうち7割は地下線となる。
《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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