旅客廃止やむなしも、貨物輸送は鉄道が不可欠…北海道長万部町が北海道新幹線の並行在来線に言及

長万部駅で発車を待つ函館行き普通列車。「渡島ブロック」で協議している函館~長万部間は五稜郭以北で貨物列車が運行されているため、簡単には鉄道廃止を結論付けられない。
  • 長万部駅で発車を待つ函館行き普通列車。「渡島ブロック」で協議している函館~長万部間は五稜郭以北で貨物列車が運行されているため、簡単には鉄道廃止を結論付けられない。
  • 長万部駅構内の特急『北斗』。長万部町では新幹線駅舎の建設に伴ない、現駅舎を取り壊し、仮駅舎への移転が計画されている。

北海道新幹線札幌延伸時にJR北海道から切り離される並行在来線(函館本線函館~小樽)の存廃について、北海道長万部(おしゃまんべ)町新幹線推進課では町民からの意見を集める取組みを行なっている。

現在、並行在来線をめぐっては、長万部~小樽間を「後志ブロック」、函館~長万部間を「渡島ブロック」に分けて、「北海道新幹線並行在来線対策協議会」が存廃論議を進めているが、4月に行なわれた会議では、2030年度末とされている札幌延伸後30年の収支見通しが、全線鉄道存続のケースでは、いずれも単年で20億円前後の赤字が見込まれるとされており、鉄道の存続が財政的に厳しい見通しとなっている。

これを受けて長万部町では、5月に町内3駅(国縫・中ノ沢・二股)で利用者への聞き取り調査を実施している。その総数は32人と少ないものの、廃止されると「やや困る」「著しく困る」が21人、ほとんど困らないが10人という結果となった(1人は未回答)。

また、代替交通の希望形態としてはバスによる定時運行が18人を占めているが、既存のバス路線で代替可能かという問いについては、23人が不可能という回答を示している。

「既存のバスでは時間の都合が合わないため、普通列車を利用している」「バスの増便があれば代替は可能」という声が多数あり、長万部町では鉄道存続の負担の大きさを鑑み「並行在来線の旅客は廃止する方向で検討すべき」という考えを示している。

現在も意見募集は行なわれており、「国鉄の歴史は何らかの形で残してほしい」「他沿線自治体と並行在来線の存廃の足踏みを揃える必要がある」「新幹線と在来線のある長万部駅の魅力を自ら手放すのはどうかと思う」といった意見が寄せられており、並行在来線を各自治体ごとに存続させた場合はどうなるのかという声もあった。

函館~長万部間では五稜郭以北でJR貨物の貨物列車も運行されていることから、並行在来線が廃止されれば北海道の物流ルートに大きな影響を与えることが懸念されている。町民の間でも「新幹線で北海道物流を支えることは難しいのでは」という声があり、長万部町でも貨物輸送を海運やトラックなどに置き換えることについては、ドライバー不足や輸送距離を考慮すると「北海道新幹線開業後も、並行在来線を使用した貨物運搬は必要不可欠であると考えられてます」としている。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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