「タイヤ力」を可視化するインテリジェントタイヤ…トーヨータイヤが概念実証

トーヨータイヤの「タイヤ力」コンセプト
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トーヨータイヤが7日、次世代モビリティ社会に向けたと銘打った技術を発表した。走行中タイヤの性能や限界をモデル化し、可視化する技術だ。この指標として同社は「タイヤ力」なる言葉を使い、CASE車両への可能性を披露した。

「タイヤ力」とは、タイヤの空気圧・温度・路面判別・荷重・摩耗・異常状態を総合的に表したもの。センサーからのデータをAI(CNN:畳み込みニューラルネットワーク)で解析、前記5つの状態がどんな状態にあるのかを数値化する。イメージとしては、サーキット走行他で走行分析に使うGセンサーの情報に近いが、評価されるのは加速度センサーによる荷重(量・変化)だけではない。タイヤの荷重とスリップ量なども計測・計算し、現在タイヤが置かれている状況、発揮している性能に対して、限界がどのあたりにあるのかもわかるという。

一般的な車両のGセンサーは、車両全体の2次元的な荷重移動と量をレーダーチャートのような円グラフで表す。タイヤ力も同様なチャートで表すことができるが、最大の違いは、そのタイヤが置かれている状況での限界がわかることだ。荷重移動センサーでは、荷重の絶対量はわかるが、それが限界付近でのグリップなのかどうかはグラフからは読み取れない。タイヤ力の可視化モデルでは、路面状況やタイヤの状態によって、レーダーチャートの外縁の大きさも変わる。円が小さくなれば、スリップ量が多くなっておりタイヤや路面状況から限界に近いグリップで走行していることがわかる。

センサーは一般的な半導体加速度センサー(MEMS)と温度センサー、圧力センサーなどを利用する。回転するタイヤから、これらのセンサー情報を取り込み、学習されたAIモデルに処理させる。AIは入力されたデータによって、タイヤの状態や路面状態他を予測する。

わかりやすくいうと、タイヤにセンサーとAIモデルを搭載し、走行中の1回転ごとの各タイヤの状態、限界を予測認識してくれる。「いま安定して右旋回中」とか「限界超えてスリップしている」といった状態だ。計測と学習が進めば、「バーストしそう」「偏摩耗のバイブレーション」といったことも識別できるかもしれない。

走行中のタイヤの状態が、このレベルでわかると、いちばん恩恵を受けるのはおそらくADAS機能や自動運転だ。例えば、衝突被害軽減緊急ブレーキなどは、タイヤの状態までは考慮していない。平均的なタイヤなら制御に大きな影響を与えるものではないが、路面がドライでなかったり、タイヤの摩耗が進んでいると、衝突を回避しきれない(現状でも回避を保証しているわけではないが)。タイヤや路面の状況がリアルタイムでわかれば、回避アルゴリズムの調整が可能になる。「このタイヤの限界が落ちているので、警報と介入を少し早めよう」といったことが可能になる。

他にも、地図情報と組み合わせて、コーナー手前の減速アラートやブレーキ等への介入制御が可能になる。タイヤ力のログを分析すれば、摩耗やメンテナンス予測、パンクや異常時の原因分析にも使える。

この技術はまだ概念実装(PoC)の段階で、AIがタイヤのセンサーからタイヤ、路面、車両の状況を把握する予測モデルが確立された状態だ。商品化には、さらなる学習データの収集が必要だという。商品としては、現状のTPMSのようにアフター部品として販売されるのか、センサーと通信機能のチップをタイヤに組み込むだけにするのか、詳細は未定だ。

もちろん、天候やコーナーによってアラートを出したり、ADAS機能の調整・最適化を行う方法は、他にもあるし、研究されている。カメラ情報だけでも、路面の状態が把握できる。従来からのGセンサーの情報だけでもある程度の状態はわかる。しかし、自動運転やADAS機能の幅を広げるとき、唯一路面に接しているタイヤからのリアルタイムな情報のニーズは増えてもおかしくない。

センサー内蔵タイヤと車載AIモデルのユニットで販売してもいいが、センサー内蔵タイヤだけをOEMに供給し、制御や応用については、タイヤ力の予測モデルとデータの開発情報を公開し、IPをライセンスするとしてもよい。後者のほうが、各OEMがADASや自動運転の制御に組み込みやすく、幅広いニーズに対応できそうだ。

《中尾真二》

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