SBドライブ、ANAが実施した羽田空港内での大型自動運転バスの実証実験に協力

ANAによる羽田空港制限エリア内での大型バスの自動運転実証実験
  • ANAによる羽田空港制限エリア内での大型バスの自動運転実証実験
  • 制限エリア内をレベル3の自動運転で走行
  • 制限エリア内を走行するBYDの大型バス「K9RA」
  • SBドライブが提供する遠隔監視ステム「ディスパッチャー」
  • 車内でも運行状況を常に監視しながらの走行となった
  • 事前に取得した高精度マップ上を走行し、LiDARによる差分検出をしながら障害物を避けて走行する
  • 自車位置の測位はRTK-GPSとSLAMを必要に応じて切り替えて対応。両方を検知できないときは推測航法となる
  • エアサイドでは自動化による省力化が恒に求められている

ソフトバンクの子会社で自動運転事業の運行管理を推進する SBドライブは、全日本空輸(以下:ANA)が羽田空港内で1月22日から31日まで実施する大型自動運転バスの実用化に向けた実証実験で、遠隔監視などで協力すると発表。初日の22日、その様子を報道陣に公開した。

今回の実証実験に使用する大型バスは、中国・深センの電気自動車メーカー「BYD」の日本法人ビーワイディージャパンが納入したもので、ANAとして同社製車両を導入するのはハワイのホノルル空港~アラモアナ・ショッピングセンター間の運行に続く2例目となる。車両はBYD製「K9RA」で、これに先進モビリティが自動運転車両の改造を加え、SBドライブでは遠隔監視システム「ディスパッチャー」による運行管理を担当。この日を迎えた。

ANAでは18年2月と19年1月の2回、同じ空港の制限エリア内で自動運転の実証実験を行ったが、その時は先進モビリティが所有する日野自動車製小型ディーゼルバス『ポンチョ』(定員28人)を使い、GPSと磁気マーカーを併用する走行方式を採用していた。それに対し、今回は磁気マーカーを使わず、定員57人の大型自動運転バスを使ったレベル3(SAE)での実証実験となった。このサイズでの実験は国内初で、空港の制限エリア内での実証実験として世界でも例がないという。

今回の自動運転の走行方式はRTK-GPSのほか、磁気マーカーの代わりにLiDARを活用したSLAMを採用。周囲の環境地図を作成しながら自己位置を推定する技術を使って測位する。上空に向けて遮蔽物が多い空港内では、安定した測位にGPSは貢献できないため、それを補完するためのシステムが欠かせない。そこに今回はSLAMを採用したのだ。このSLAMは身近なところでは周囲の状況を検出して移動経路を最適化しているロボット掃除機にも使われているもの。今回のセンシングでは周囲80m前後をこのSLAMで認識し、さらに遠い距離はフロントに取り付けたミリ波レーダーで検知する。後方に搭載されたHESAI製LiDARと光学カメラ後方に搭載されたHESAI製LiDARと光学カメラ

今回の実験に磁気マーカーを採用しなかったことについて担当者は「磁気マーカーは基本的に路面への敷設が必須となり、その分だけコストもかかるし、準備期間も必要とな((貼るタイプもあるが、剥がれる危険性を考えて空港内では利用がNG)。今回は建屋の近くを走行することで安定した対象物が得られるということでこの方式を採用した。ただ、正確にルートをトレースする絶対精度では磁気マーカーに及ばず、今後は適材適所で採用を考えていく」と回答した。

SBドライブの佐治友基社長は、「自動車メーカーは一般に肝心な制御系について公開しないものだが、BYDはそこをオープンにしてくれた。20年内の試験運用を目指す最先端の実証実験を行うにあたっては、この協力なしに実現できなかった」と語り、ディスパッチャーと高い精度で連携できることになった背景について述べた。また、佐治氏は、「今回は自動で走るだけではなく、管制側から自動運転車両へ指示を下せるよう、通常のディスパッチャーをカスタマイズしている。(今後は)空港オペレーションや業務フローとの理解を深めながら事業モデルをつくっていく」と語った。

現在、SBドライブでは、「Dispatcher」を今回の実証実験で使用される車両を含めて11車種と連携させている。同社では今後も様々な自動運転車両の運行管理・監視に「Dispatcher」を利用できるよう開発を進めていくとしている。

《会田肇》

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