エンジンを載せる、だけど「使わない」という選択…ホンダ クラリティPHEV 開発秘話[オートモーティブワールド2019]

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本田技術研究所四輪R&Dセンターの若城輝男主任研究員
  • 本田技術研究所四輪R&Dセンターの若城輝男主任研究員
  • ホンダ クラリティPHEV
  • ホンダ クラリティPHEV
  • ホンダ クラリティPHEVに搭載sれる1.5リットルエンジン
  • ホンダ クラリティPHEVのパワーユニット
  • 本田技術研究所四輪R&Dセンターの若城輝男主任研究員
  • ホンダ クラリティPHEV(写真はプロトタイプ)
  • ホンダ クラリティPHEV(写真はプロトタイプ)

ホンダが2018年7月から日本国内で販売を開始した『クラリティPHEV』は2モーターハイブリッドシステムをベースにバッテリーを始めとする電動コンポーネントの性能向上により、電気だけで114.6kmの走行を可能にしたのが特徴となっている。

クラリティPHEVのプラグインハイブリッドシステムの開発を手掛けた本田技術研究所四輪R&Dセンターの若城輝男主任研究員は「私が造りたかったものはプラグインハイブリッドだとは言っていない。どこでもいける電気自動車を造りたかった」と言い切る。

エンジンを「使わない」という選択

ホンダ クラリティPHEVホンダ クラリティPHEV
ホンダはクラリティPHEVにも搭載されている2モーターハイブリッドシステム「i-MMD」を使ったプラグインハイブリッド車を2013年に『アコード』で商品化している。だが若城氏は「アコードプラグインハイブリッドの大きな欠点は、ハイブリッド車をベースにリチウムイオン電池を積んだので、電池容量は限られていたため、日本仕様の電動走行距離は37.6km、アメリカでは13マイルだった」と指摘する。

というのも「その航続距離では高速に入るとすぐにエンジンがかかってしまう。ひどい時にはフリーウェイに行く前にかかってしまう。『何のために夜、一所懸命に充電プラグを差しているのか』と、お客様から言われた」からだ。

さらに「しっかりと電気で走っている、電気だけで生活できるようにしないと、プラグインハイブリッドは何のためにあるのかとなってしまう」とも。

若城氏は「欧州を始めとするCO2排出量や燃費規制への対応」がこうした考え方の背景にあるとした上で、「エンジンの効率を上げて、それが50%になろうが、ある意味100%になってもCO2はゼロにはならない。なので方法論としてはエンジンの効率を上げるのではなく、エンジンを使わないということ。一番良いのはピュアEV(電気自動車)にしてしまうことだが、ピュアEVではバッテリーの値段が高く、航続距離の不安もある。だから普段エンジンを使わないようにして、かつピュアEVよりも安心して自由に移動できるクルマ」に辿り着いたという。

エンジンがあるからこそ電池を使い切れる

ホンダ クラリティPHEVに搭載sれる1.5リットルエンジンホンダ クラリティPHEVに搭載sれる1.5リットルエンジン
だが「普段エンジンを使わないクルマ」は社内で大きな反発を招いた。「エンジン屋さんからは一所懸命エンジンを造ったのになぜ使わないのか、また一方では全部電気で走れば良いのではないかとも言われた」と若城氏は振り返る。

こうした意見に対し若城氏は「使わないエンジンだけど、大事なのは存在感。EVと違って、そこにエンジンが載っているという存在感が大きい。これがあるからこそバッテリーを使い切れる。EVだとユーザーはバッテリー容量の3-4割を残してしまう。最後まで使えるのは、存在感のあるエンジンのおかげ。一番信頼性があるから、成立する」と社内を説いて回ったという。

それゆえに「クラリティPHEVは本当のプラグインハイブリッドとは何かということを議論した上で、造ってきたクルマ」と若城氏は自信を示す。
ホンダ クラリティPHEVのパワーユニットホンダ クラリティPHEVのパワーユニット
一方、i-MMDについて若城氏は「2つのモーターの間に直結クラッチがあって、エンジンと直結して高速ギヤみたいな形で走れるモードがあるが、それ外してしまえば単純にモーターだけで走れる。そうすると電気でどんどん長いこと走れる、どんどん車速を上げて走れる。その時にものすごく真価を発揮する。i-MMDはハイブリッドシステムとして非常に有効なシステムが、プラグイン化することで、その能力をもっと引き出せる」と話す。

そこで「大きなバッテリーシステム、それから小型で高密度な高出力VCU(ボルテージコントロールユニット)内蔵のPCU(パワーコントロールユニット)の技術」を搭載した。これらのユニットがあることで「エンジンの運転の自由度を引き上げることができた。アコードプラグインハイブリッドは2リットルエンジンを搭載していたが、それよりも車格が大きいクラリティPHEVが搭載するエンジンは1.5リットル。ダウンサイジングターボと同じ思想を電動でやっている。そういうコンセプトがクラリティPHEVには入っている」と若城氏は解説する。

「オートモーティブワールド」で講演

本田技術研究所四輪R&Dセンターの若城輝男主任研究員本田技術研究所四輪R&Dセンターの若城輝男主任研究員
その若城氏は1月16日から東京ビッグサイトで開催される「第11回オートモーティブワールド」の2日目(1月17日)の専門セッション『xEVを支える駆動システムの技術革新』に登壇し、「クラリティPHEV用新型i-MMD Plug-inの技術革新」をテーマに講演する。

「なぜそれを造ったのか、どうのようにそれを造ってきたのかという話は、これまであまりしていない。いろんなことに悩んで造り、新しいものが生まれ、それをまたさらに改良して、いろいろなものが生まれてきている。そうした過程を話したい」と若城氏は専門セッションに向けた思いを述べていた。

■本講演の詳細は
https://reed-speaker.jp/Conference/201901/tokyo/top/?id=AUTO&lang=jp#AUTO-1

■第11回オートモーティブワールド
自動運転、クルマの電子化・電動化、コネクティッド・カー、軽量化など、自動車業界における重要なテーマの最新技術が1120社出展する世界最大の自動車技術展。「国際カーエレクトロニクス技術展」「EV・HEV駆動システム技術展」「クルマの軽量化技術展」「コネクティッド・カーEXPO」「自動車部品・加工EXPO」「自動運転EXPO」の6つの展示会を開催する。また業界の第一人者たちが講演するオートモーティブワールドセミナーも注目を集めている。

■展示会のご入場には招待券が必要です。招待券請求(無料)受付中!
※招待券の事前登録により、入場料(5,000円)が無料になります。
https://www.automotiveworld.jp/inv/

会期:2019年1月16日(水)~18日(金)10:00~18:00 (最終日のみ17:00まで)
会場:東京ビッグサイト
主催:リード エグジビション ジャパン株式会社
■第11回オートモーティブワールド 詳細はコチラ!

《小松哲也》

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