「お父さんがただの運転手にならないミニバン」。かつて三菱自動車のモータースポーツディヴィジョン、ラリーアートの社員ドライバーとして活躍し、パリ=ダカールラリーで2度総合優勝を飾った増岡浩氏は、デリカの特質についてこう語る。
三菱自動車は25日、1968年に『デリカ』の初代モデルを発売してから今年で50年となるのを記念し、「デリカ誕生50周年キャンペーン」を展開すると発表した。
「現行の『デリカD:5』を何度となく運転しましたが、ことハンドリングの良さと安定性の高さの2点についてはワンボックスタイプとして類例がないくらいに優れていると思う。オフロードの走破性という点でも唯一無二。単に家族で移動するというだけでなく、ドライバーにとって運転という作業が楽しく感じられるというのは、家族でのドライブを楽しいものにするうえでとても大事なことだと思うんです」
「50年にわたってこのコンセプトを保てたことは素晴らしいと思いますし、デリカに限らずこれから三菱が再起するうえで忘れてはいけない心だと思います」
キャンペーンのメディア発表が行われた東京芝の三菱自動車本社には、歴代デリカのモデルが並べられた。その中で増岡氏にとって一番思い出深いモデルは1986年にデビューし、1994年に第4世代の『デリカ・スペースギア』がデビューしてからも併売され、実に18年という長寿モデルとなった第3世代モデルの『デリカ・スターワゴン』だという。
「副変速機つきの5段フロアシフト。ドライバーが自分のオフロード走行技量を思う存分楽しめるモデルでした。後継のデリカスペースギアがフロアシフトを捨てなかったのも、デリカのオーナーの多くがその楽しさにこだわりを持っていることがわかったからだったんですよ」(増岡氏)
オートキャンプが日本にほとんど知られていなかった1972年、第1世代のデリカにポップアップルーフテント付きの「キャンピングバン」をラインナップするなど、古くから遊びの提案が盛り込まれてきたデリカ。現行デリカD:5はデビュー後すでに12年目に入っているが、4月25日にフロントの意匠変更を含めたマイナーチェンジが施されたことから、今しばらくは現役モデルでいるものと予想される。次のデリカがどのような仕立てになるかということも含め、三菱の遊びへのこだわりがどう継承されていくか興味深い。