商品設計まで考えられるエンジニアに…『エンジン用材料の科学と技術』山縣裕著

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「エンジン用材料の科学と技術」山縣裕著
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『エンジン用材料の科学と技術』
著:山縣裕
発行:グランプリ出版
定価:2800円(消費税抜き)
ISBN978-4-87687-348-7

ドイツ議会は2030年までに内燃機関車両の製造を中止することを発表した。VWの不正事件は欧州でもディーゼル離れを引き起こしているという見方も存在する。そんな時代にエンジンの本の新刊を出す出版社がある。それがグランプリ出版だ。

正確には書下ろしの新刊ではなく、多くのベテランエンジニアがお世話になっただろう「現代の錬金術―エンジン用材料の科学と技術」(山海堂刊)の追補版の復刊である。といっても多くの人は「それがどうした?」かもしれない。わからなくてもいい。つまりは、1980年代に出版されたエンジンの材料組成と設計技術に関する工学書が、2010年代半ばをすぎてなお、受け継がれているという事実が伝わればいい。

本書は、エンジンを構成する各部品ごとに、それらに必要な機能、性能、特性を材料や製造・加工方法について詳しく解説されている。例えば、高熱にさらされながらシリンダー内で膨張を最小限にするピストンの素材の話。サージングを抑えるバルブスプリングの工夫。カムシャフトはなんで中空構造なのか。といったことが図解や写真とともに展開される。特筆したいのは、10章の商品機能と素材の関係に関する部分だ。ピストン、バルブシート、コンロッド、クランクシャフトなど各構成部品を掘り下げるだけでなく、エンジンとしての全体性能や機能を考え方を述べている。設計において、各部の要求仕様の追求だけでなく、コンポーネント、製品としての要件・全体像の把握は欠かせない。そんなポイントも押さえている良書といえよう。

なお、これからEVをやろうとしているからシリンダーの知識なんて要らない、内燃機関なんて時代遅れになる技術を学ぶ必要がないというエンジニアがいたとしたら、著者序文から以下を引用しておこう。

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電気自動車のモーターにおいても、エンジン同様、軽くて出力の高いパワーユニットが求められることには変わりない。軽量高出力を実現するには、例えばアルミニウム合金でできたウォータージャケットを持つ高剛性の水冷のケーシングが求められる。これは現在のシリンダーブロックで追及されている材料技術・生産技術の開発目標に近い位置にある。
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《中尾真二》

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