【インタビュー】NVIDIAの自動運転プラットフォームが目指すもの...オートモーティブ事業キーマン、ダニー・シャピーロ氏に聞く

レスポンスでは「GTC Japan 2016」開催中にNVIDIAのオートモーティブ事業部シニアディレクターを務めるダニー・シャピーロ氏に単独インタビューを行い、実用化に向け加速する同社の自動運転プラットフォーム戦略について話を聞いた。

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ダニー・シャピーロ氏(オートモーティブ事業部シニアディレクター)
  • ダニー・シャピーロ氏(オートモーティブ事業部シニアディレクター)
  • NVIDIA DRIVE PX for AutoCruise
  • ジェンスン・ファン氏(NVIDIA共同創設者、社長兼CEO)
  • NVIDIA DRIVE PX
  • DRIVE PX illustration
  • DRIVE PX 2 Autocruise product render
  • ダニー・シャピーロ氏(オートモーティブ事業部シニアディレクター)
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10月5日にお台場で開催された、GPU開発者向けカンファレンス「GTC Japan 2016」。GPUを活用した完全自動運転技術が注目される中、NVIDIAが主催した今イベントは2600名以上もの来場者を集めた。

レスポンスでは、同イベント開催中にNVIDIAのオートモーティブ事業部シニアディレクターを務めるダニー・シャピーロ(Danny Shapiro)氏に単独インタビューを行い、実用化に向け加速する同社の自動運転プラットフォーム戦略について話を聞いた。
(聞き手:三浦和也)

----:「GTC Japan 2014」にてインタビューさせていただいた際は、Tegraプロセッサをアウディ車に搭載し、ADAS(先進運転支援システム)が普及していくという話でした。その頃はAIについて触れていませんでしたが、2015年のCESくらいからニューラルネットワークやディープラーニングについて話し始めています。AIの取り組みよりも先にNVIDIAさんは自動車への取り組みを行っていたことになりますが、それはコンピューティングの変化がAIをもたらしたのか、それとも自動車への取り組みがAIを求めたのでしょうか。

ダニー・シャピーロ氏(以下敬称略):自動車業界からそういったニーズがあったのが大きいですね。ニーズは常にありましたが、現状の規模での実装ができていないとあまり意味がなかったため、最近まではそれが具現化していなかったのです。例えば自動車メーカーと協業した場合、試作車のトランクいっぱいにモジュールを乗せていました。そこで、私どもの「Drive PX」が初めて、きちんと自動車業界のニーズを満たすパフォーマンスを実現したうえで、車で実装できるだけの小ささを実現した初めてのソリューションでないかと考えています。

Drive PX

ディープラーニングに関しては、ニューヨークタイムズをはじめとした一般記事を扱うメディア媒体でもここ数年くらい多く話題にあがっていますが、ここまでビッグデータにアクセスができるようになったという理由のほかに、やはりGPUの存在が一番大きいのではないかと感じています。弊社CEOのジェンスンによる基調講演でも述べましたが、GPUの持っている並行処理能力がディープラーニングを加速させているのです。例えば時には2カ月でかかっていた分析がものの1日で終わってしまうだとか、そういったスピードアップが大きいと思います。

----:AIが人間の知能を超えるシンギュラリティが2045年に起こると言われていますが、NVIDIAが自動車に関して起こるシンギュラリティは何年だと思いますか。

シャピーロ:実は私はそのようなことは気にしていないのです。私どもが目の当たりにしているのは、システムなりコンピューターが、一定の分野においては人間を超えるような能力を得るよう学ばせることができるというもので、これが急激に加速しているのだと思います。コンピューターでの超人的なレベルのものと、自由な発想でのイノベーションでは、やはり少し趣が異なるのではないでしょうか。

----:そもそものアプローチが違うのでしょうか。それとも答えが違う?

シャピーロ:シンギュラリティがいつ来るかについては、誰もまだ何も言えないところでしょうし私もお答えできません。私どものゴールは、自分で考えることができる車を開発することではなく、あくまでも人間の運転者をはるかに卓越するパフォーマンスを持ち、一定の情報に基づいて適切な判断をできるようにさせることです。しかし、それは自分で考えるというよりはインプットされた情報に基づいて判断を行うための仕組みだと考えています。そういった意味では、より良い判断をさせるかの部分で存在意義・価値のあるプラットフォームということですね。

データが重要なシステムとなりますので、必要なデータをできる限りシステムに取り込ませるためのセンサーや、もう一つのレイヤーとして地図データも活用します。V2Xによる車車間、路車間のやり取りなど、それらのデータをすべて集約して適格な判断ができるようにしているのです。例えばセンサーによる対向車への判断で重要になってくるものの一つとしては、このあとどちらに曲がるのかという情報を車両間の通信で対向車からデータをとるという方法もあります。天候の情報やその時の交通状況、路面の状態など、そういった情報すべてを集約してシステムに取り込むことができれば、より確実な情報のインフォームドディシジョンを実現することができます。

《佐藤大介》

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