【インタビュー】3Dビジュアライゼーションが自動車業界のマーケティングを変える…オートデスクの「VRED」が描く新たな顧客体験

3Dと聞くと、映画やゲームが思い浮かぶ人も多いだろう。しかし、3Dは今や自動車のデザインから設計、マーケティングまで幅広く活用されている、ひとつのフォーマットになりつつある。

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【インタビュー】3Dビジュアライゼーションが自動車業界のマーケティングを変える…オートデスクの「VRED」が描く新たな顧客体験
  • 【インタビュー】3Dビジュアライゼーションが自動車業界のマーケティングを変える…オートデスクの「VRED」が描く新たな顧客体験
  • 中島康雄氏(左)<br>ジョン・ウォンジン氏(右)
  • 中島康雄氏(技術営業本部 製造担当アカウントマネージャー)
  • ジョン・ウォンジン氏(インダストリ ストラテジー&マーケティング 自動車産業ビジネス開発マネージャー)
  • Vehicle designed and built by Marc Mainville
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  • Vehicle designed and built by Marc Mainville
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3Dと聞くと、映画やゲームが思い浮かぶ人も多いだろう。しかし、3Dは今や自動車のデザインから設計、マーケティングまで幅広く活用されている、ひとつのフォーマットになりつつある。3Dを単なるデータではない、次の次元に引き上げたのが、3Dビジュアライゼーションソフトウェア「Autodesk VRED」だ。

本記事では、「Autodesk VRED」の特徴や活用法、今後の展開、そして10月21日に開催されるイベント『IMPRESS3D JAPAN 2016』について、同社の技術営業本部の製造担当アカウントマネージャーである中島康雄氏、そしてインダストリ ストラテジー&マーケティングの自動車産業ビジネス開発マネージャーであるジョン・ウォンジン氏にお話をうかがった。

◆レンダリング画像の品質が段違い…VRなど最新技術もマーケティングに活用できる

----:まずは、御社について教えてください。

ジョン・ウォンジン氏(以下敬称略):3D 技術を使ったデザイン・設計、エンジニアリング、エンターテインメント向けソフトウェアのリーディング企業です。近年は、新しい技術を利用した製造や建設、消費者の購買行動の変化、イノベーティブな製品を生むコラボレーション環境などが組み合わさって、ものを作る方法が全く新しい方向に転換していて、弊社の顧客にその変化に率先して対応していただくために、「The Future Of Making Things」 ~ものづくりの未来~ という考え方のもと、将来必要になるソリューションを提案しています。

----:「VRED」とは何かを教えてください。

中島康雄氏(以下敬称略):「VRED」は、ドイツ生まれの3Dビジュアライゼーションソフトウェアです。自動車などの設計に使用するCADデータをそのまま読み込んでビジュアル化し、さまざまな角度からデザインをリアルタイムでインタラクティブに確認したり、写真のような画像を非常に短時間で作成したりすることができます。ドイツを中心に欧米や日本でよく使われています。

まず、レンダリングの品質が非常に高いことが本ソフトウェアの特長です。レンダリングでは、光源を設定して光の反射や屈折を計算しますが、複数の光源による複雑な反射や屈折も現実と同じように再現できます。
他に、「VRED」はレンダリング手法を2種類搭載していることが他の製品と比較して優れているポイントです。ひとつは一般的なレイトレーシング、もうひとつは「OpenGL」と呼ばれるハードウェアによるレンダリングです。1台のPCで計算できるレイトレーシングも非常に早いですが、サーバを使って分散処理することで、たとえば自動車1台に数分かかるレンダリングをコンマ数秒で行えます。このレンダリングの速さも「VRED」の特徴です。

さらに、OpenGLの高速なレンダリングによって、VR(バーチャルリアリティ)を提供することも可能です。VRによって発売前の車をバーチャルショールームに出現させ、リアルタイムでボディカラーや内外装の変更を確認することもできます。自動車業界以外でも、建築やスポーツ用品などでそのように活用されることもありますね。このインパクトは大きく、お客様のエモーションを引き出すことにも有効だと考えています。

また、一般的な3Dソフトでは、たとえば自動車のシートの表面にテクスチャと呼ばれる「模様のついた画像」を貼り付けますが、「VRED」では自動車でよく見かけるさまざまな材質が用意されており、それを選択することで忠実に再現します。最近は、計測した材質データを使うことで、実際の写真と見分けられないレベルの表現も可能です。

レンダリングの際には、写真撮影するときのカメラと同じ考え方で設定が可能です。つまりカメラマンは、実車がない状態でもマーケティング用の写真を用意できるわけです。また、自動車の動きとカメラの動きを設定することで、動画を出力することもできます。写真と同じく、動画でも実車がなくてもCMを作ったり、ウェブサイト用のプロモーション動画を掲載したりすることが可能になるのです。こうした手法はヨーロッパではすでに一般的となっています。

ウォンジン:自動車デザインでは、デザイン確認用モデルを制作すると数千万円から1億円程度のコストがかかります。しかし、CADデータがあれば「VRED」でレンダリングしてデザインを立体的に確認でき、リアルタイムでインタラクティブに見ることもできます。実際のモデルを制作することを考えると、サイズが大きいほどさらに費用対効果が高くなります。他の3Dソフトはゲームや映画にも活用できるよう多機能になっていますが、自動車産業で使うには機能が多すぎるんですね。その点、「VRED」はより自動車に特化したビジュアライゼーションツールだといえます。

----:日本独自の機能もあるのでしょうか。

中島:「VRED」は現在、英語版と日本語版があり、他に中国語と韓国語版も用意しています。。日本からリクエストした機能も多く、複数のプラグインの提供や、APIの公開もしています。それ以外にも、材質の表現をさらに向上するようリクエストしたり、操作性を高めたりと、日本のユーザーにも親しみやすいソフトウェアにアップデートされています。

ウォンジン: 4K、8Kでもインタラクティブにデザインや設計を検討したいというお客様の声も多いので、それも対応しています。既にVRも対応していますが、これからも各種の新技術への対応を進めていきます。

◆設計、デザイン、マーケティングのすべての部署で活用できる

----:実際にどのようなシーンで活用されているのでしょうか?

中島:ドイツ生まれということもあり、ドイツの自動車メーカーはほとんど導入していますね。また、日本でも大手の自動車デザインで導入されており、最近ではマーケティングエージェンシーで利用されるケースも増えています。昔に比べれば、簡単な操作で高速なレンダリングができるので、3DCGのプロフェッショナルのみならず、ユーザーとの距離が近いシーンでの導入も進みつつある状況です。

ウォンジン:他にも設計部門での導入が増えている印象です。設計部署では、たとえば形状や見栄えをリアルな画像で確認できますし、CADデータを使用しているのでドアとボディの隙間が均一かどうかといった品質チェックにも使えます。ビジュアルが正確でクオリティが高いため意志決定が早くなり、開発を加速できるというメリットもあります。また、設計、デザイン、マーケティングで同じデータを活用できるので、全工程で作業の効率が高まることもポイントです。

中島:お客様から特に好評をいただいているのが、光の表現です。背景はHD画像データや3Dデータを使うのですが、太陽の位置や背景による反射などを忠実に再現することができ、その結果ボディやパーツへの映り込み、ボディカラーの変化も細部にわたって確認できます。もちろん屋外でのビジュアライゼーションだけでなく、フォトスタジオの照明を正確に再現することも可能で、ヘッドライトやブレーキランプ、メーターの照明も正確にビジュアライズします。デザインの確認からウェブサイト用イメージなどのマーケティングアセットの作成まで、設計・デザイン・マーケティングのすべての部署で有効なツールです。

◆3DCGのためのイベントではなく、自動車業界の新しいマーケティングを発見する場に

----:10月21日にレスポンスと『IMPRESS 3D JAPAN 2016』を開催します。

中島:このイベントは、もともとドイツのVREDユーザー会から始まったものです。今年は“顧客体験を変えるバーチャル・マーケティング”をキーワードに、自動車業界のマーケティングにおいて3Dビジュアライゼーションがどのように活用されているのか。「VRED」の価値を認識して使っている方たちが、どのように顧客にメッセージを届けているかなど、マーケティングにおける最先端の情報が明らかになるはずです。会場では各出展者がVRなどを活用した興味深い展示も行います。自動車業界の関係者はもちろん、マーケティングや、エージェンシーの方などにも非常に興味深いな内容になるのではないでしょうか。

ウォンジン:自動車業界でビジュアルに関わっている方はもちろん、これからのマーケティングを模索している方、新しい顧客体験を創造したい方にもぜひいらしていただきたいですね。実際に「VRED」で課題を解決したお客様の事例も聞けますし、技術を理解している人からビジュアライゼーションのトレンドを聞くこともできます。また、オートデスクCTOオフィスの研究者なども来場しますので、新しい出会いもあるはずです。

中島:特に、マーケティング部門がデータを活用して今後どのように顧客にアプローチするのか、製品やブランドにどういう付加価値をつけるか、そうしたマーケティングの可能性を感じていただけると思います。インスパイアされるアーティストの方もいらっしゃいますし、3DCGを活用することで自動車はもっと付加価値を提供していけるということを実感して頂きたいです。

イベント詳細はこちらから

《吉澤 亨史》

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