鉄道の災害運休区間、熊本地震の影響で約500kmに…4月末

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国土地理院がドローンで空撮した豊肥線の土砂崩れ現場。JR九州は復旧に「かなりの時間を要する見込み」としている。
  • 国土地理院がドローンで空撮した豊肥線の土砂崩れ現場。JR九州は復旧に「かなりの時間を要する見込み」としている。
  • 4月末時点の運休区間。留萌線が全線再開した一方、熊本地震の影響で約50km増加した。

災害による鉄道路線の長期運休区間は、4月末時点で計498.5kmだった。4月14日以降、最大震度7の地震が2回発生した熊本地震の影響で、3月末時点に比べ53.6kmの増加となった。

この地震では列車の脱線や線路内への土砂流入など、地震動による大きな被害が発生。その一方、津波による被害はなかった。鹿児島本線は1週間で全線再開し、九州新幹線も約2週間で全線再開するなど、当初の予想以上に復旧が早く進んだ。

一方、豊肥本線は大規模な土砂災害で線路が流失しており、全線再開までには相当な時間がかかる見込み。やはり土砂崩れで路盤が流失した南阿蘇鉄道の高森線も、相当な時間がかかると見られるが、同線は1日平均の通過人員(旅客輸送密度)が2012年度の時点で500人を割り込んでおり、状況によっては路線の存廃問題が浮上する可能性もある。

2月から雪害運休が続いていた留萌本線留萌~増毛間は4月28日に再開したが、JR北海道は再開当日に同区間の廃止を届け出た。手続き上の廃止予定日は2017年4月29日。沿線自治体が廃止に同意しているため、今年12月5日(12月4日限り)に繰り上げられる可能性が高い。

■JR北海道 日高本線 鵡川~様似(北海道) 116.0km
2015年1月の低気圧による高波と同年9月の台風17号の影響で運休中。バスによる代行輸送が行われている。再開のめどはたっていない。利用者が極度に少ない一方で多額の復旧費用が足かせになっており、路線の存廃問題も浮上している。

■JR東日本 山田線 上米内~川内(岩手県) 51.6km
2015年12月の土砂流入で運休中。再開のめどはたっていない。岩手県北バスの都市間バス『106急行』への振替輸送が行われている。

■JR東日本 山田線 宮古~釜石(岩手県) 55.4km
2011年3月に発生した東日本大震災の影響で運休中。岩手県北バス・岩手県交通の路線バスによる振替輸送が行われている。三陸鉄道が運行を引き継ぐことを条件に、2018年度末の再開に向けて復旧工事が進められている。

■JR東日本 大船渡線 気仙沼~盛(宮城県・岩手県) 43.7km
2011年3月に発生した東日本大震災の影響で運休中。暫定復旧策としてBRTを導入し、線路敷地の一部を活用したバス専用道を走る代行バスが運行されている。JR東日本と沿線自治体は、BRTを「本格復旧」と位置づけて継続運行する方向で合意し、鉄道の廃止が決まった。

■JR東日本 気仙沼線 柳津~気仙沼(宮城県) 55.3km
2011年3月に発生した東日本大震災の影響で運休中。暫定復旧策としてBRTを導入し、線路敷地の一部を活用したバス専用道を走る代行バスが運行されている。JR東日本はBRTを「本格復旧」と位置づけて継続運行することを提案し、沿線の南三陸町・登米市と合意。残る気仙沼市とも今年3月に合意しており、鉄道の廃止が決まった。

■JR東日本 常磐線 竜田~原ノ町(福島県) 46.0km
2011年3月に発生した東日本大震災と福島第一原子力発電所事故の影響で運休中。2015年1月から代行バスの運行が始まったが、途中駅は全て通過している。

JR東日本は今年3月、全線再開に向けたスケジュールを発表。まず今春に小高~原ノ町間を再開し、続いて浪江~小高間を2017年春、竜田~富岡間を2017年内に再開する。福島第一原子力発電所事故による帰還困難区域を通る富岡~浪江間は、除染や復旧工事の課題解決の見通しが立ったとし、2019年度末までの再開を目指す。

■JR東日本 常磐線 相馬~浜吉田(福島県・宮城県) 22.6km
2011年3月に発生した東日本大震災の影響で運休中。ルートを内陸側に移設する工事が進められている。バスによる代行輸送は不通区間より広い相馬~亘理間で行われている。今年12月末までに再開する予定。

■JR東日本 只見線 会津川口~只見(福島県) 27.6km
2011年7月の豪雨で影響で運休中。バスによる代行輸送が行われている。再開のめどはたっていない。

■大井川鐵道 井川線 接岨峡温泉~井川(静岡県) 10.0km
2014年9月の大雨で発生した土砂崩れの影響で運休中。代行輸送は行われていない。今年11月頃に再開する模様。

■JR九州 豊肥本線 肥後大津~豊後荻(熊本県・大分県) 52.6km
4月に発生した熊本地震で、土砂崩れによる線路流失などの被害が発生。宮地~豊後荻間のみバスによる代行輸送が行われている。復旧には相当な時間がかかる模様。

■南阿蘇鉄道 高森線 立野~高森(熊本県) 17.7km
4月に発生した熊本地震の影響で、路盤が流失するなどの被害が発生。代行輸送は行われていない。

◎再開:JR北海道 留萌本線 留萌~増毛(北海道) 16.7km
気温上昇による雪崩を警戒して今年2月12日から運休。4月28日に運転を再開した。

《草町義和》

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