【シトロエン C4 試乗】ただ距離を重ねていくだけで心地良い存在…森口将之

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シトロエン C4 と 森口将之氏
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デザイン、燃費、走り、価格。クルマを買うときに重視するポイントはさまざまだ。でもこうした項目がすべて、「移動」という行為から出てきていることを、みなさんは考えたことがあるだろうか。燃費は移動するときのコストだし、デザインや走りは移動体がもたらす歓びを表現したものだ。そして価格はこれらをトータルで考えたときの価値を数字に置き換えたものと言える。

ヨーロッパ人はこの移動という概念を重視している。中でもフランスは、移動を大切にする国のひとつだ。世界でいち早く、基本的人権のひとつとして、移動権を法律で認めた国なのだから。クルマも例外ではない。パリに本拠を置くシトロエンは、100年近くもの間、移動というテーマに真摯に向き合ってきたブランドだ。第2次世界大戦前から大陸横断を通じて移動の可能性を追求し、戦後1948年に生まれた『2CV』は、手押し車に頼ってきた農民に自動車の素晴らしさを提供した。その後も個性的なデザインや快適な乗り心地によって移動の歓びをアピールしてきた。

加速やハンドリングといった具体的な事項ではないので、言葉だけで説明するのは大変だけれど、乗ればシトロエンならではの移動の快感は理解できるはず。というのが、このブランドを4車種所有してきた自分の感想である。

だから今回、『C4』で約300km試乗する機会を得たのはとてもラッキーだった。旧型C4を所有していることもあり、このクラスのシトロエンが並外れた快適な移動をもたらしてくれることを肌で知っているからだ。

現行C4には、「セダクション」と「セダクション・アップグレードパッケージ」の2グレードがある。乗ったのは後者だ。最新型はヘッドランプやリアコンビランプにLEDを用いている。これが面白い。フロントはマーカーランプとウインカーを共用し、リアは光が飛び出すような3D効果を演出しているのだ。

キャビンに入ると、優しく体を包み込むようなシートが迎えてくれる。走り出す前からシトロエンに乗ったことを満喫できる。ここに身を置いた人の多くが、無意識のうちに頬を緩めているはずだ。

パワートレインは昨年、1.2リットル直列3気筒ターボとトルコン式6速ATのコンビに切り替わった。以前はATが4速だったり、2ペダルMTがシングルクラッチ方式だったり、この国で万人に勧められるスペックではなかった。でも今度は大丈夫だ。最高出力は130ps、最大トルクは23.5kg-mと、自然吸気なら2.4リットル級の実力の持ち主なので、加速に不満はない。音も静かで、2000rpmあたりの100km/h巡航を含め、エンジンの存在はほとんど気にならない。最近は欧州車も3気筒の採用例が増えてきたけれど、C4のそれは完成度ではトップレベルにあると断言できる。

排気量が小さく、力が適度なエンジンなら、サスペンションを固めずに済む。つまりシトロエンの本領発揮だ。無理やり感が漂うドイツ車のダウンサイジングとはまったく違う。ストロークを確保したサスペンションが自在に動いて、心地良い移動のひとときをもたらしてくれる。

ハンドリングも、軽いエンジンと柔らかい足が素直な身のこなしを生み出している。大径でリムが細く、軽めのステアリングに手を添え、ふっかりしたシートに身を委ね、しっとりした乗り心地を堪能しながら、抜群の直進性に導かれるように進んでいくシーンで、最高に心地良い時間を届けてくれる。エンジンの力に合わせてシャシーをチューニングしているのではない。まず最上の乗り心地とハンドリングを追求し、それに見合うエンジンをチョイスしたのではないかという印象を受けた。

ふと上を見ると、アップグレードパッケージに標準装備されるガラスルーフが、早春の柔らかい日差しをキャビンに届けてくれた。これがまた移動の歓びを盛り上げてくれる。山道なんかなくてもいい。ただ距離を重ねていくだけで心地良い。理想の移動とはどうあるべきか、教えてくれるクルマだった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★


森口将之|モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト
1962年東京都生まれ。自動車専門誌の編集部を経て1993年に独立。雑誌、イン ターネット、ラジオなどで活動。ヨーロッパ車、なかでもフランス車を得 意とし、カテゴリーではコンパクトカーや商用車など生活に根づいた車種を好む。趣味の乗り物である旧車の解説や試乗も多く担当する。また自動車以外の交通 事情やまちづくりなども精力的に取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。
《森口将之》

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