【川崎大輔の流通大陸】ローカル中古車ディーラーから探るタイ中古車市場

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サイアムカーガーデンは今年で35年目のバンコクの老舗(しにせ)中古車ディーラーだ。代表取締役社長のDr. Vichaiyut Laungsuwon(ルアン氏)にタイでの中古車市場の展望と課題について話を聞いた。


◆タイ自動車市場の現状

2015年のタイ国内の新車販売台数は前年比9.3%減の79万9594台で、3年連続で前年実績を下回った。タイでは2011年の洪水によって自動車の供給が追い付かず新車販売台数が急激に落ち込んだ過去がある。

政府は市場を回復させる目的もあり2011年にファーストカーバイヤー施策を打ち出し意図的に新車流通を増加させた。その施策は結局2012年も続き、過去最高の販売台数143万台を記録することとなった。2013年は100万台の大台を超えたが、それは12年の受注残の影響が残っていたためだ。3年連続で前年実績を下回っている新車販売台数の減少は、本来のタイ国内需要を一時的に超えてしまったため販売台数のトレンドが適正台数へ調整されているとの考えるのが適当であろう。

中古車市場の今後の展望を考える際、先行指数となる新車市場の動きは重要となる。新車が購入された後、4から5年後に中古車として市場に流通すると考えれば、タイの中古車市場はこれから本格的な、流通調整の局面に突入することになるだろう。


◆タイ中古車ビジネスの課題

「2016年以降の中古車価格は下がるだろう」とルアン氏は言う。中古車市場にとって最も大きな課題は中古車が市場に溢れかえるオーバーサプライ(過剰供給)である。

供給サイドとしては、ファーストカーバイヤー施策によって購入された新車が一気に市場に流出することで供給が増える。ファーストカーバイヤーは2011年9月半ばから2012年12月にかけて実施された。1台目の自動車を購入する場合に物品税を最大で10万バーツ還元するという制度だ。ただし、自動車購入後、5年間保有する必要がある。2016年の半ばより5年を迎える自動車が中古車市場に流通することが予想されている。

また需要サイドでは、消費不振に追い打ちをかけるような家計債務の問題がある。ファーストカーバイヤー施策によって自動車ローンが急増したこと、また2011年の大洪水によって、個人消費ローンが増えたことが原因となっている。それによって自動車ローンのNPL(不良債権)が上昇したため自動車ローンが利用しづらい状況にある。更にルアン氏は、「野菜やゴムなどの価格の下落、水不足などが予想されており、消費市場の伸びが期待できず、自動車の購入者も減るのではないか」と指摘をする。


◆サイアムカーガーデンの中古車ビジネス

2015年より今年2016年の方が中古車の販売台数が増えてきているようだ。私は2016年1月下旬にサイアムカーガーデンを訪問した。2015年12月の月間の販売台数は50台であったが、2016年に入り1月の月間販売台数は約1割の増加になりそうだとルアン氏に聞いた。しかし話を聞いているとタイの中古車市場が回復をしてきたというよりは、サイアムカーガーデンの経営努力の結果のように感じた。

理由として、約50台の販売台数の半分(25台)ほどはリピーター顧客への販売であった。また、サイアムカーガーデンというディーラー内で自ら整備工場を運営している。多くのタイの中古車ディーラーが修理は外の業者に流してしまう中、自動車のバリューチェーンを創(つく)り上げているのだ。更に、自社で購入された中古車に関しては独自の保証制度を設けている。他(ほか)と比べて中古車の価格は若干高めではあるが、販売したら売りっぱなしん業者で購入するよりも顧客は安心感を得るだろう。交換部品などは有料だが、アフターサービスの手数料がずっと無料となる。

タイの中古車は値段が下がる傾向にある。安くなければ購入されることがないため、収益を確保するためにはその周辺の附帯ビジネスで利益を上げていく必要があるだろう。そういった意味で、サイアムカーガーデンは既に他社との差別化を図りビジネスを展開していっている。


◆今後の中古車ビジネスの展望

今後、中古車ビジネスのプレーヤーの入れ替わりが激しくなることが予想されている。中古車ビジネスをやりたい人が増え、個人若しくは小規模な中古車業者(在庫20台以下)の新規進出が増える可能性がある。中古車の価格が下がり、ビジネス参入の敷居も低くなるためだ。

現在、タイ全体に約5000社の中古車ディーラーがあると言われている。一方で、中古車ディーラーの数が増え続けることはなさそうだ。なぜなら、潰(つぶ)れるディーラーも多く存在するためだ。タイの中古車協会では現在200ディーラーほどが加盟をしている。2年以内を目安に協会が認定ディーラーの公開を考えている。一定基準をクリアしたディーラーに何かしらのライセンスなどを与え、タイ中古車市場の認知と信頼の向上を目指す。グレーな中古車ディーラーは排除されるだろう。

タイの中古車流通の調整が完了に至るまでには少し時間が必要ではある。しかし、信頼したビジネスを行い、かつ利益を確保できる企業だけが生き残っていく流れはこれから徐々に始まっていくだろう。

<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。
《川崎 大輔》

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